ララバイ - Levi:attack on titan

 目を開けていても閉じていても同じだった。
 瞼の裏もだだっ広い地下も同じ色だったから。

 熱い夜は寝苦しく、渇いた喉が張り付いても潤すものなどない。
 冷える夜はガタガタ凍え、指の先から感覚が失せていく。
 腹の音がうるさくて寝付けない。
 どれだけ拭っても拳は血の匂いがする。
 隣の布っきれからは嫌な死臭が漂っていた。
 埃臭い掃き溜めのような地下の街。汚ねぇ臭ぇ、どれだけ拭っても拭っても。
 死の匂いが鼻を突く。この匂いは・・・どこからしているのか。
 自分じゃないのか。本当はもう、死んでるんじゃないのか。
 土砂降りの雨に濡れても、どろどろの土にこすりつけても取れない。
 血の匂い。死の匂い。
 拭っても、拭っても、拭っても・・・

「・・・」

 ビクリ、溺れそうな感覚に陥って、身体が跳ね上がった。
 薄く開いた瞼の隙間からぼやりと色が差し込んでくる。
 喉が張り付く。水分が欲しい。口唇が渇いてパリパリと崩れていきそうだ。
 熱い。体が重い。腕ひとつ、動かせないほど。

「大丈夫ですか?」
「・・・」

 キンと遠くから耳鳴りのように響いて、ようやく目を覚ました。
 薄く照らされた橙色の天井から視線を傾けると、覗きこむ彼女の目があった。

「・・・何がだ」
「なんだか寝苦しそうだったので」

 隣で寝ていたはずの彼女が、額に頬に冷たいタオルをあてがっていく。
 脳内を焼け焦がすような熱が静かに引いていく。
 重く沈みこみそうだった体から気だるさが解けていく。

「いつから起きてんだ」
「つい今ですよ」

 汗を拭い続ける手を掴むとその手は随分と冷えていた。
 つい今ベッドから出たような温度じゃない。

「もういい、寝ろ」

 ふと笑み頷き返すのに、彼女は汗を拭う手を止めない。
 額に張り付いた前髪をといて、乱れたふとんをかけ直して。
 ・・・その温度を、覚えてなどいない。知らないと言ってもいい。

「お水持ってきますね」

 パリ、と痛みを覚える口唇を再度開くが続きを飲みこまされる。
 喉が乾けば水を飲む。腹が減れば飯を食べる。
 もう昔と違い、それらは手に入らないものじゃないんだから、欲しけりゃ自分でとりに行く。

「・・・いい」

 立ち上がろうとした彼女の腕を掴み引き戻す。
 でも、と言いかけた彼女の続きを、抱き締め奪った。
 細い背中なのに。弱い腕なのに。守っているのは自分だと思っていたのに。

 いつからだろう。施しを受けることに抵抗がなくなったのは。
 いつからだろう。世話を焼かれることに安心を覚えるようになったのは。

「・・・」
「え?」

 なぜ、柔な腕に抱かれることを心地よいと感じるのか。
 耳元の鼓動を懐かしいと思うのか。
 覚えてなどいないのに。知らないと言ってもいいのに。

「離れるな」
「・・・」

 目を開けていても閉じていても同じ。
 それは今も変わらない。
 この胸の中では、目を開けていても閉じていても、同じ。

「おやすみなさい、リヴァイさん・・・」

 光の中にいる。




Baby Love - Levi:attack on titan


(連載ヒロイン。すべての戦いが終わった後設定)


 食事も終え後は夜が更けるばかりの家に、ドンドンと激しいノック音が響いた。
 それは日常を逸脱する音で、台所で洗い物をしていた彼女は手を拭き駆けていった。

「先生、助けてくれ、子どもが!」
「どうしました?」
「突然お腹が痛いと苦しみだして、泣きやまないの」

 玄関を開けると、ふもとの町に住む夫婦が子どもを抱え血相を変えて訴えた。
 父の腕に抱かれる男の子がお腹を抱えてうんうん唸っている。
 付き添う母は生まれたばかりの赤子を抱き目に涙をためて、家族を急ぎ家の中へ入れると、ソファでお茶を飲んでいたリヴァイが「ここを使え」と立ち上がった。

「こちらへ寝かせてください」
「夜分にすみません、リヴァイさん」
「いや」

 広間のソファに子どもを寝かせ、彼女は痛がる子どもの腕を外しお腹を触診する。
 おろおろと様子を見下ろす夫婦のうしろでリヴァイは台所のテーブルの椅子に腰を下ろした。

「食事はしました?」
「ええ、いつも通り食べていたのだけど、急にもういらないと言いだして」
「戻したりは?」
「それはないが、ずっとお腹を抱えて痛がってるんだ」
「そうですか。レオ、どのあたりが痛いの?」
「おなかの・・・ここ」
「どんなふうに痛い?」
「・・・どんなふう・・・?」

 痛い痛いと訴える、その表情を見ながら、あらゆる箇所を押さえ様子を見る。

「ここは?」
「い、痛い」
「ここは?」
「痛い・・・」
「そう」

 うろうろと移ろう目で彼女を見返す男の子は、ちらり不安そうに両親の顔をのぞき見る。
 その様子を見て彼女は立ちあがり、ちょっと待っててと部屋を出ていった。

「お父様、彼を抱いていてくれますか」
「あ、ああ」

 戻ってきた彼女は父親をソファに促し、子どもを膝の上に抱かせその上からふとんをかけた。
 心配で涙をためる母に大丈夫ですよと笑み返し、台所でミルクを取り出し火にかけ、カップに湯気の立つミルクを入れると夫婦の元へ戻っていった。

「薬を混ぜました。これを少しずつ飲ませてください」
「分かりました」

 母親から赤子を受け取り、代わりにカップを渡す。
 父に抱かれる子どもの前にしゃがむ母は、痛み苦しむ我が子に少しずつミルクを飲ませた。
 その様子を見届けて彼女は台所に戻り、リヴァイは自分の隣の椅子を引いてやった。

「問題ないのか」
「ええ、すぐよくなりますよ」
「薬入れてたか?」

 赤子を抱き椅子に座る彼女はクスリと笑んで「いいえ」と返した。

「きっと、寂しかっただけです。お父さんもお母さんも、生まれたばかりの弟に取られてしまって」
「・・・ああ」

 なるほどと納得し、リヴァイは彼女に抱かれている小さな赤子を見下ろした。
 柔らかな布にくるまれ小さな手をぎゅっと握る赤ん坊。
 こんな小さくて弱いものを授かれば、それはかかりきりにもなるだろう。
 自分もそうして生まれ大きくなったことなど忘れて、嫉妬もするだろう。

「小さいですね」

 誰もがそうだったのに、誰も覚えていない。
 普段赤子など目にしないから余計に、人であることすら疑ってしまう。
 まるで別の生き物みたいだ。こんなに小さくて、それでも確かに生きているのだから。

「抱いてみますか?」
「・・・いや、いい」
「大丈夫ですよ、ほら」

 彼女がそう差しだすも、リヴァイは目を伏せる。

「俺の手は赤子を抱く手じゃない」
「・・・」

 血の沁みついた手。すべての物を壊してしまえる手。
 命を奪う手で、生命の溢れる希望の詰まった赤子など。
 抱くどころか触ることすら恐怖だ。
 そもそも、こんなに小さく弱い生き物に触れる加減など分からない。
 いつだって全力しか必要じゃなかった。抱くなど、巨人に向かっていくより恐怖を感じる。

「赤ちゃんが手を握っているのは、その手に希望がたくさん詰まってるからなんですって」
「・・・」
「だからこんなにぎゅっと手を握っているんですって」

 そう彼女は、リヴァイの手を取ると、赤ん坊の小さな手にあてた。
 指も爪も規格外に小さい。その柔らかさを指先に感じる。
 くあ・・・とあくびをして涙でまつ毛を濡らす赤ん坊が、その小さな手を開きリヴァイの指先を握った。
 こんなに小さく弱いのに。

「意外と力強いでしょう」
「・・・ああ」

 かわいい。
 柔らかなまなざしで赤ん坊を抱く彼女はポツリと落とした。

 ミルクを飲み終わったころ、すっかり元気になった家族は夜道を帰っていった。
 父に抱かれ、母に見つめられ、明るさを取り戻した男の子は手を振り駆けていった。
 いつまでも手を振り見送る彼女は、まるでまだ赤ん坊を抱いているかのように柔らかに笑んで。

「欲しくなったか」
「・・・」

 隣に立つリヴァイが彼女の頭を抱きながら言う。
 本当は、自分より彼女の方が怖がっていること、分かっている。
 この血を受け継ぐ者。

「抱いてくださらないんでしょう?」
「自分のガキなら抱くさ」

 振り返りふふと笑みを向けた彼女の額に口付ける。
 夜風の入り込む玄関をパタンと閉めて、何度も何度も口づけを交わした。
 笑う三日月がいまだ不器用な二人に幸福を運んでくるのは、まだずっと先の話ー。





taste tea - Levi : attack on titan

虫も鳴かぬ冷えた夜、リヴァイはテーブルの向こうでソファに腰掛け考え耽っていた。
前回から間を空け2ヶ月ぶりに壁外調査が行われた今日。
いつも通り、帰ってすぐ風呂も食事も済ませ普段通りに見えた彼だが、 その後はずっとああして両膝に腕を置き、目の前にない何かをずっと見ている。

「・・・」

俯いていて表情は見えないが、難しい顔をしていることは容易に想像がつく。
彼はいつだってそう。何を考えているのかなど誰にも分からない。
普遍な冷静と平静。孤立的で客観的で利他的でありながら利己的。
彼の心の内など誰にも分からない。

耳にカチャンと陶器のぶつかる音が入って、彼は見ていなかった目の前を見た。
そこには両膝にひじをついた自分の手があった。
何体も巨人を切り裁いた右手。血に浸された左手。
ごつごつと硬い手。 その向こうにはベルト跡の残る足。
触り心地の良い起毛の絨毯。害のない柔らかさを足裏に感じた。
少し視を上げると、テーブルに置かれた盆の上にティーセットがあった。
金色の淵の白い皿に乗った、同じく白いカップ。花柄の陶器の流線形のポット。
ポットが傾けられ、トポトポと注がれた液体がカップを満たし香りを生む。
柔らかな香り。たったこれだけの湯気が、まるで部屋の温度を上げたような。
皿に乗ったカップが盆から運ばれテーブルの端、リヴァイの目の前にカチャンと置かれる。
それに添えられた白い手、細い指がカップから離れていく。
テーブルの向こうに、再びカップに紅茶を注ぐ彼女。

紅茶を持ち、斜め前にある一人掛けソファに腰掛ける彼女はカップの前ですぅと息を吸った。
いいかおり。
彼女の口は動いていないのに、カップを口元に微笑んだ彼女から、そんな言葉が聞こえた気がした。
目の前に置かれた熱い紅茶。 リヴァイは右手を伸ばしカップを掴むと、体を起こし左腕を背もたれに乗せた。
口先がカップに当たるより前に止めると香り立つ湯気が鼻孔を突く。
匂いに形などない。なのに何故、これを柔らかいと表現するのか。

「いい匂いだな」

香りが鼻を抜け風味が広がる。
呼吸で循環される血液のように体内を廻る。
きっと自分は、それを言葉以外で伝えることが出来ないから、口にした。
すると紅茶を一口含んだ彼女が、まるでこの紅茶の茶畑を思わすような 小さな白い花のような笑顔をパッと咲かせた。

「でしょう? きのう頂いたんです。とても楽しみだったんですよ、夕食の後が一番合うんですって」
「ならきのう開ければ良かっただろ」
「きのうじゃリヴァイさんがいらっしゃらないじゃないですか」

さも当然かのように。彼女はふふと笑む赤い口唇にカップを寄せる。
香り立つ湯気が彼女の体内を廻る。 飲み物なのに香りばかりを愉しむ彼女。

「で、お前はなんでそこにいるんだ」
「え?」

その彼女を見ながら、リヴァイは背もたれに預けている左手で自分の隣を指差した。
それを見て彼女は先程よりも大輪の笑顔を咲かせ、リヴァイと同じソファに場所を変えた。
紅茶の風味に彼女の香りが混ざり込む。

「紅茶って飲みすぎると中毒になるんですって」
「これでなるならとっくにどうにかなってる」
「リヴァイさん紅茶好きですものね。控えなきゃですね」
「心配すんな、お前の方がずっとタチが悪い」
「・・・、どういう意味ですか?」

味や感触のような直接的じゃなく、じわじわと沁み込み侵していくような。
血の管に入り込んで、呼吸とともに同化していくような。
空気のようにそこにあって、形などないのにあらゆる棘を丸くして 一滴一滴、大岩に穴を開けていく一粒の水滴のような。
そばにいればこの香りに包み込まれて。その肌に髪に触れたくなって。
触れているのはこっちなのに、いつの間にか絡み取られてしまって。
毒気を抜かれて、内からじわじわ侵食されて、なんだかすべてがどうでもよくなってしまって。

毒だ。きっと、これは味わう毒。

「ところで何深刻なお顔なさってたんですか?」
「さぁな、忘れた」

ほら、もうとっくにどうにかなってる。





極楽鳥花. - Levi:attack on titan

(10連打ありがとう文。ドエロ注意。苦手な方は今すぐウィンドウを駆逐)

 何十回と繰り返された壁外調査も、いまだに核心を突く成果は得られず被害は留まらない。
 誰の顔も蒼白となり、意気消沈したまま本部へと帰還する。
 涙も言葉も出ない。今回はこれまで以上に被害が甚大だった。
 ひと気のない静かな本部の廊下をパタパタと靴音が素早く通っていく。
 奥にある扉の前に立つや否やノックする。扉のプレートに刻まれた「兵士長室」の文字。

「失礼します、リヴァイさん」

 返事を聞く間も耐えられず扉を開ける彼女は開けた扉の中を見渡す。
 すると部屋の奥で小さく振り向いたリヴァイを視認した。
 しかしその背姿の上半身は着衣しておらず、彼女は驚き咄嗟に背を向けた。

「すっ・・・すみません」
「構わん。なんだ」
「あ、あの、リヴァイさんが怪我をしたと聞いて・・・」
「ああ・・・」

 彼女は背を向けたまま、いくら急いでいたとはいえ返事も聞かずに開けてしまったことを後悔した。
 マスクの下で赤面し後悔する彼女にリヴァイは「入れ」と促す。

「怪我というほどでもない。爪が剥がれただけだ」
「立派な怪我です! ふたつも取れてるじゃないですか」

 部屋の中央に位置するソファに座るリヴァイの前で彼女は救急箱を開く。
 血を流し続けるリヴァイの右手の人差指と長指の先にガーゼを当て消毒液を落とした。
 巨人に食われかけた兵士を助けた時、落下していく意識のない兵士を捕まえ廃屋の外壁を掴み爪が弾け飛んだ。
 もちろん手足を失ったり頭から喰われたりする痛みの比ではないだろうが、想像がつく痛みなだけに真っ赤に腫れた指先は痛々しかった。

「他に、どこか怪我していませんか? 異常を感じるところは」

 傷テープを指先に丁寧に巻いていく。
 ゴツゴツとした硬い手は手綱を強く握り続けたせいでいまだ小刻みに振動していた。
 素肌の熱い胸板につと汗が流れていく。心なしかまだ息も上がっているようだった。

「汗がひかん」
「汗?」
「体が異常に熱い。気が治まらん」
「それはどういう・・・」

 傷テープを巻き終えて彼女はリヴァイの指先から目前の顔に目を上げる。
 するとリヴァイは彼女の口を覆うマスクをぐいと引き下げた。

「え・・・」

 熱気を感じるほどリヴァイが近くなる。髪を覆っていた布も取り払われた。

「調査の後はたまにこうなる・・・興奮が収まらん」
「リヴァイさ・・・」
「静めろ」

 リヴァイの痛んだ右の指先が彼女の左頬に添う。
 と同時に左手が強く彼女を掴み引き寄せおもむろに口づけられた。
 息の仕方も分からないほど強く交わされる口づけの合間に動揺する彼女は近づいてくるリヴァイに手を突き立てるが、そんな細腕など構わず彼女の白衣の下のシャツに手を伸ばすリヴァイはぷつりぷつりと手早くボタンを外していった。

「リヴァイさ・・・」
「黙ってろ」

 ぐいと広げられたシャツから出た細い肩が外気に触れる。
 後ろでまとめ上げていた髪も解かれ長い髪が背中に落ちた。
 制止どころか反論も許されない口は閉ざされたまま、硬い床に流れ込みリヴァイの口は肌を添って胸へと落ちて、彼女はビクリと大きく身体を震わせた。
 下着をも捲し上げられリヴァイの熱く柔な舌が胸の先でちゅくちゅくと音をたてる。
 ぞくりと肌を逆なでする感触が背中に走ると、その行為を認識する間もなくリヴァイの手が胸に腹にと撫で下ろし腰のベルトとボタンを解きほどいた。

「リヴァイさっ・・・キャッ・・・」

 まさかそこまで、と彼女は次々脱がされることに驚きリヴァイの肩に手をつく。
 だけどその手は止まらず下着もろとも引きずりおろされ腰から膝まで露わとなった。
 胸を口いっぱいに含んでいたリヴァイの舌が腹筋をなぞりへそへと落ちる。
 ぢゅくぢゅくと舌先が音をたて、そのままリヴァイは足元へと沈んでいった。

「リヴァイさ、リヴァイさんっ・・・!」

 ぞくり・・・快楽より先に恐怖が体の中心を走り抜ける。
 まだはっきりと冴えている明かりが天井をありありと見せ、脚と脚の間にこそばゆくリヴァイの髪が刺さる。
 柔らかい舌が脚の間で暴れ、乱暴な口が生まれた湿り気を吸い取りゴクリと喉を鳴らした。
 内腿を撫ぜる中指が脚の合間に入ろうとして、しかし傷テープが邪魔をしたから細い薬指を差し込んだ。
 それでよかった。快楽をもたらそうとしたわけではないから。
 ただぬめりを奥まで確かめたかっただけだから。

「もう我慢出来ん・・・痛かったら言え」
「え・・・あッ・・・」

 身体を起こしたリヴァイが何かを言った。
 でもそれを聞き取ることも出来ないままに、熱くほだされた脚の合間にさらに熱い異物が当てがわれた。

「やっ・・・」

 柔な隙間に硬く押し入ってくる痛み。濡れてはいるもののまだ慣れていない小さな隙間。
 そこに不躾にぐいぐいと押し入ってくる。彼女はこめかみに痛みを走らせぎゅと目を瞑った。
 ぐぐ・・・ぐぐ・・・うまく入らない個所に構わず突き進む。

「おい、力抜け、入らねぇ・・・」
「ッ・・・!」

 そうは言ってもこの状況でこの行為で、いくら心底惚れ込んだ相手だとしても、すべてをかなぐり捨てて情事に没頭出来るほど、リヴァイより小さな体は大人になれていない。そんな彼女を見かねてリヴァイは彼女の腕を引き体を起こした。

「乗れ」
「え・・・」
「乗れって」
「え、えっ?」

 残っていた服をすべて取り払われ、腕を引かれ腰を引かれ彼女はリヴァイの膝の上に乗せられる。
 体を重ねることは初めてでないが、その膝の上に乗りリヴァイを密接に見下ろすなど初めてで彼女は赤面を止められなかった。白く細い腰にあてがわれたリヴァイの大きな手が居場所を探るように誘導する。一度引き抜かれた異物が再び体の中心に入り込む。

「り・・・リヴァイさん・・・」
「ん」
「あの・・・脚・・・汚れちゃいます・・・」
「・・・」

 目の前で遠慮がちな彼女の目が申し訳なさそうに俯く。
 その表情と言葉は熱されていたリヴァイの脳に若干の冷静さをもたらせた。
 つと胸を流れ落ちる汗さえ感じるほどに。

「きゃっ・・・あッ!」

 リヴァイは彼女の腰をぐいと強く引き寄せ、ずぷりと彼女の体内に自分を沈ませた。
 彼女の軟体が電流を走らせたように反り返る。
 いまだリヴァイに全体重を任せられないでいる彼女の腰がブルブルと震えている。
 頬を赤らめ恥ずかしさで目も開けていられない彼女の鼻先でリヴァイは熱く息を吐いた。

「心配いらん・・・後で隅まで洗ってやる」
「そ、んな・・・」

 頭の中が熱されすぎてまともな言葉も下りてこない。
 そんな彼女をなおも追い詰めるかのように、細腰を押さえつけたまま下からゆさりと腰を動かした。
 ゆさりゆさり、何度も揺らせばやがて彼女の体から力が抜けて終にリヴァイに身を任せる。
 目の前にあった胸先を食むと耳元で細い声が絞り出され、余計に欲をかきたてられ止まらなくなった。
 振動が伝わるごとに声を絞り出す。なんとか堪えようとするけどリヴァイがそうはさせなかった。
 リヴァイもやがて彼女の快楽に気遣う余裕もなくなり強く腰を押しつけ出す。
 ゾクゾクと体の中心を迫りくる快楽が心臓も脳も飲みこみ体すべてを侵食した。
 どくどく流れ出る熟れの果てが彼女の胎内に排出されてやがて流れ落ちてくる。
 リヴァイの肩に力なく頭を倒している彼女は呼吸だけやっと繰り返す。
 その呼吸に合わせるように息を吐くリヴァイは若干の罪悪感を握りつぶし額の汗と彼女の胸の汗を混ぜ合わせた。

 やがて眩暈と荒立った呼吸が沈静していくと彼女には恥ずかしさだけが残った。
 リヴァイから離れることも出来ない。どんな顔をすればいいか分からない。
 けれどもそんな心配など構いやしないリヴァイの手が彼女の口を誘導し深く口づけた。
 呼吸を混ぜ合わせ、呑み込み、惜しむように口先を食んで離れる。
 その口付けが先ほどまでの痛みも忘れ、あまりに甘くとろけるようで、彼女は目の前にきたリヴァイの眼を何の外聞もなく見つめ返した。
 いつも厳しいその眼が奥の奥で甘やかすようで、どこまでも落ちていきたくなった。

「・・・エロイ顔すんな、とまんねぇだろ」

 その空気とは裏腹に、あまりに節操のない言い方をするものだから彼女は不貞腐れた。


(10連打サンクス。お礼になってない。)