Just a little - Levi:attack on titanカタンと聞こえた気がした物音で目を覚ますが、まだ早朝にも早い時間。 窓の外は暗く、部屋の中も天井も真っ暗でなにも見えなかった。 長い髪を滑らせながら寝がえりをうち、隣に目を向けるも、そこも暗くて見えない。 暗くて見えないから、手を伸ばしてみた。 けれどもその手にはシーツしか触れず、床に就いた時と同じ、ぽっかりと空白のまま。 夜に目を覚ますのは嫌だ。 一人の夜は長いから。また、眠りに就くまでが長いから。 陽の光がようよう滲みだした頃、いつもより早い時間にベッドから出た。 視界が晴れてもやっぱり、誰もいない寝室。 床に足を下ろし、少し肌寒い空気の中、袖のない腕を撫ぜた。 ふとんの上にかぶせていた上着を羽織って、ぎしりと床板を軋ませて寝室を出る。 廊下も洗面所もシンと静か。顔を洗い、髪を梳かし、曇った鏡の自分を見つめる。 肌が少し荒れて、目が腫れて、なんだかひどい顔。 当然静かな食卓で、テーブルに残ったお皿の上に乗った布を取る。 果物もパンも、昨晩置いたまま残っていたから、朝食にした。 渇いた喉にパンは通りづらく、だけども果物を切る気分にもなれず、食事を終える。 着替えなきゃ。洗濯をして、床も拭かなきゃ。出かける準備もしなきゃ。 そう思うけど、起きたころから気だるいままの身体は言うことを聞かずにいた。 一人では広い食卓で、冷やかな空気を肌に感じ、なのに目にはじわり熱を感じ・・・息を吐いて顔を拭った。 ・・・すると、遠くで小さく、ひひんと馬の鳴く声を聞いた。 パッと手を外し、もう一度耳を澄ます。 今度は確かに蹄の音を聞き取って、立ち上がり窓に駆け寄った。 家の前の馬房に入る黒い馬。その手綱を結びつけている・・・黒髪の後ろ姿。 パッと表情を明るくするも、自分が起きたままの恰好なことに気がついた。 急いで寝室へ駆け戻り、上着と寝間着を脱いで引き出しから服を取る。 着ようと袖を通して、あ、でもこれは前に分かれたときに来ていた服だと思って脱いだ。 黄色にしようか。赤にしようか。こっちの方が。いや、こっちのほうが。 肌寒さも忘れて服を掘り返す。そうこうしている間に玄関がガチャリと開く音を聞いた。 急いで服を着て、寝室を出て玄関のほうを見ると、もう寝室の前まで来ていたリヴァイに驚いた。 「リヴァイさん・・・おかえりなさい」 「まだ寝てたのか」 「い、いいえ、着替えてて」 ふんと相槌を返しながらリヴァイはこちらに手を伸ばし口元に口唇を寄せる。 廊下の暗がりの中で、何日かぶりかのリヴァイの口付け。匂い。疲労の眼もと。 離れ、静かな眼で見つめてくるリヴァイは頬に当てていた手をそのまま首元に滑らせて 服の中に入ったままだった長い髪を梳き通し外へ出した。 「お疲れですね。休みますか?」 「いや、着替えてすぐに戻る」 「そうですか・・・。お食事は?」 「ろくにメシも食ってねぇが、2時間後には会議だ」 「じゃあ果物を切りますね。シャワーどうぞ。着替え用意しておきます」 「ああ」 リヴァイの視界に入り、空気に混ざり、触れられた途端、体が軽く羽が生えたように動いた。 気だるさなど溶けて、面倒くささも消え去って、部屋の中まで明るく見えた。 切り分けた果物と魚の煮物を食卓に並べ、湯を沸かしお茶の用意を整える。 「足の腫れどうですか?」 「どうしてもベルトが当たるからな、治りは良くない」 「以前より赤くなってますね。お薬塗りましょうね」 風呂から出たリヴァイは用意しておいたシャツを持ったまま食卓に現れ、髪を拭きながら、擦り切れる足の付け根を気にする。 体中に張り巡らされたベルトは肌に食い込み肌をじわじわと痛めつける。 黒く残る患部に薬を塗り込み、シャツを広げて袖を通させた。 体を清め食事を取り、疲労の色が多少晴れたリヴァイの表情をテーブルの向かいからまじまじと眺める。 「問題ないか?」 「はい」 「まだしばらく帰れそうにない。家に帰っててもいいぞ」 「平気です。リヴァイさんがいつ帰ってくるか分からないもの」 「お前が一人でいる方が気にかかる」 「安心して放っておかれるより嬉しいです」 しゃくりとリンゴに噛みつきながらリヴァイが苦く表情を歪める。 兵服を着てずっと堅く難しい顔をしている時とは空気が違い、ふふと笑んだ。 一人で食事をし、広い部屋を掃除して、静かな夜に床に就き、ふとんの中で長い夜を数えている間はとても長く感じるたった一秒が、さらさらと湯水のように流れていった。 どうして愛しい時間ほど、こうも早く過ぎ去ってしまうのだろう。 もう少し、立ち止まってくれたらいいのに。 「あまり無理なさらないよう、お身体には気をつけてくださいね」 「ここに残るならお前も気をつけろよ」 「はい。いってらっしゃいませ」 まだ多少肌寒い今日、リヴァイはシャツの上に緑の上着を重ねてベルトを締める。 わずかな滞在時間を終え、リヴァイは玄関へと向かった。 洗濯しアイロンをかけたまっ白いシャツを包みリヴァイに持たせた。 扉を開け、入り込んできた眩しい光に目を細め、敷居をまたぐ前にリヴァイは振り返った。 見つめ下ろしてくるまっすぐな視線を見返し、お気をつけてとまた一度ほほ笑んだ。 「お前は・・・いつもそれだな」 「それ?」 「少しは別れを惜しめ」 「・・・」 リヴァイが目の前にいる間は、寂しがっている時間すらもったいない。 貴方が目の前にいればそれだけで満たされて、触れられれば天にも昇る幸福に抱かれる。 後のことなんて考えたくない。眠れない夜のことなんて知らなくていい。 また、きちんと帰ってきてくれれば。 「・・・」 気に病ませたくなくて、いつも通り笑って見送る。 貴方には貴方にしか負えない役目が、重く苦しい使命が待っているのだから。 だからいつも通りでいたいの。笑って見送りたいの。 大地のことは何も案じず、広い空へ高く羽ばたいてほしいから。 「・・・だから、腹の中に溜め込むな」 駄目だ駄目だと思いつつ、溢れ来る感情を、閉ざしてしまいたくもなくて。 寂しいとも怖いともうまく吐き出せない言葉は胸に詰まったまま、ポロポロとこぼれ落ちた。 開けた扉から差し込んでいた光は、細くしぼんでいってまたパタンと閉ざされる。 踵を返し一歩戻ってきたリヴァイの手が、はらはらと頬を転げ落ちる涙を掬い取る。 掌を濡らしながら親指で熱い目をなぞり、リヴァイは壊れた涙に口付ける。 目に頬に鼻筋に、口先で慰め、痛いほど抱き締め、深く絡みとるキスをした。 悲しみの詰まった涙を飲み干すほど。胸につかえた恐怖を吸い取るほど。 この瞬間だけだ。離れていかないで、ずっとそばにいてと、我儘を言えるのは。 我儘に酔いしれていられるのは。 今はただ。この瞬間だけは、愛を繋げたまま。 もう少しだけ、もう少しだけ。 End Of Night - Levi:attack on titan(連載ヒロイン。第三部、11話のあと) 真冬の床は冷気が漂って、尻も足も腰も冷えてくる。 だけど動けない。 肩に寄りかかる頭はいまだぐずぐずと涙を引きずっている。 だから動けない。 動こうという気にならない。 「髪が伸びたな」 「・・・ずっと切ってませんもの」 「だが前はもっと長かったか」 「長いほうが、お好きですか」 「まぁ・・・そうだな」 目前にある、肩から背に流れる長い髪を指に梳き取り、毛先までを撫ぜる。 自分の硬い髪とは違う。細いのに真っ黒で、先端まで艶やかに淀みない。 「リヴァイさん・・・くすぐったいです」 「髪に感覚などないだろう」 「それでも・・・くすぐったい」 「そこで喋られる方が俺はくすぐったい」 「・・・」 すぐ耳元に寄りそう頭。肩にうずめている口。背中をぎゅっと抱き締めている弱い力。 髪を手放し、少し冷えている肩を撫ぜてそのまま背中までを撫で下ろすと 腕の中できゅっと身を堅くした反応が、初々しく愛らしい。 「寒く・・・ないですか?」 「寒いな」 「ごめんなさい・・・。もう、お休みになりますか?」 「もう少し抱かれてろ」 「・・・」 パチパチと瞬きしている小さな動揺すら感じ取れる。 たった一言。一挙手一投足に揺れ動く様がだんだん愉しく感じてきた。 背中を親指で撫ぜても、細い腰回りを少し強く抱いても、恥ずかしげに身をすくめる。 鼻をつく肌の香が吸いこむごとにじわじわと体内を染め上げていくよう。 だんだん、沸いてくる。撫ぜる手が止まらない。 「り、リヴァイさん・・・、どこでお休みに?」 髪の上から耳を見つけ口唇を寄せると、さすがに過敏に感じた体がビクリ跳ね上がり わずかに身を離し、困惑して気を反らした。 さすがに・・・ここで何かをおっぱじめようというわけにはいかないか。 「2階奥の寝室をもらった」 「リヴァイさんがうちに泊まってるなんて、不思議な感じ」 「俺も、兵舎から出たのは何年ぶりだろうな」 「おふとんはもう、用意してあるんですよね」 「昨日からいるからな」 背中に振動する心臓が一度大きく跳ねたが、また少しずつ静まっていく。 「寝てねぇんだろ。寝ていいぞ」 「え・・・、あ、じゃあ、リヴァイさんもお休みに・・・」 「だから、もう少し抱かれてろって」 「・・・」 わずかに離れた頭をぐいと肩に引き寄せ、すっぽりと腕の中に戻す。 背中を抱いて肩に頭を倒し、深い呼吸を繰り返した。 ドクドク心音が響いている。背中に、胸に、呼吸に、肩に。 いや。この音は・・・自分のものか。 自分の胸が騒がしくしているのか。 空中を飛びまわってる時とは少し違う。命の危機を感じる時ともまた違う。 心地の良い高揚。 「・・・」 人の呼吸を肌に感じたのはいつ振りだろう。 人の温度を腕に抱き締めたのはいつ振りだろう。 人の傍を心地よいと思ったのはいつ振りだろう。 夜にとどまりたいと願ったのは。 光にまだ待てと睨みつけたのは。 End Of Night2 - Levi:attack on titan意識がとろけようとしていたところ、パチッと一度大きく暖炉の薪が音をたてた。 一瞬意識が飛んでいたか? 抱いたままの顔を覗き込むと、すぅすぅと小さな呼吸を感じた。 壁の大時計に目線を移して驚いた。小一時間ほどが過ぎていた。 腰も底から冷え切っている。薪も火が小さく、燃え尽きようとしていた。 もたれかかったまま力のない体を支え、抱き上げて立ち上がる。 細い体は軽々しく持ち上がり、部屋を出て2階へと運んでいった。 ひとつ目の部屋は真っ暗で、ツンと刺すほど冷え切っている。 奥のベッドのふとんをめくってそっと体を下ろし、靴を脱がせると再びふとんをかけ直した。 ランプもない室内は廊下からの薄明かりだけで朧な輪郭を浮かび上がらせる。 ベッドの端に腰を下ろし、呼吸で揺れる前髪に触れ、鼻筋から口唇を指で辿り、冷えた頬を掌で覆う。 ここのところ寝てなくて、と言っていたからには、ふとんの中の寝顔は意識のないまま。 「寝顔ばかり見ているな」 夜の帳の中で、ふと笑えた。 暗がりの寝顔を見つめ、次第に深まっていく呼吸を聞き、つんと尖った口唇の先を撫ぜる。 ベッドがギシリと重みを伝える。穏やかに寝息を漏らす鼻先に近づいていく。 前髪が触れ、鼻先が触れ、呼吸が触れ。 「・・・」 口唇が触れる、直前でふと止まり、少し考えて・・・額にチュと口先を変えた。 久しぶりのキスなら見つめられながらしたい。 またギシリとしならせながら立ち上がり、足音を控え部屋を出ていった。 一階の部屋まで戻ると暖炉とロウソクの火を消し、ランプをひとつ持って再び部屋を出る。 その手前で、部屋の隅に置かれたままの彼女のカバンを見つけた。 部屋に置いておくかと手に取った途端、傾き中身がバサりと落ちてしまう。 しまったと思うけど、それよりもその中身に視を取られた。 何枚もの書きかけの手紙と、きちんと封筒に入った手紙。 宛先も宛名もない手紙たち。 ランプを傍らに手紙を開く。 寝息を立てている温度を背に、ベッドの隅に腰掛けいくつもの手紙を読んだ。 日付の古い方は内容もおぼつかない。途中で終わっていたり滲んで読めなくなっていたり。 それが半年ほど続き、やがて日付が長くあくようになっていく。 より生活が困難になっていったのか。手紙もままならないほど多忙になっていったのか。 文字にない空間にこそ情景が浮かび心配が募った。 封筒にも入らない途中の手紙が尽き、あとはきちんと封筒に入れられた手紙の束があった。 そのひとつを開け便箋を開くと、ただの一文だけが記されていた。 いつも貴方を想っています。 その後の手紙は、手紙と言うより手記のようだった。 日々の生活や仕事、人の姿が書かれ、元の明るさを取り戻していく姿がうかがえた。 そしてそれらの最後は、必ずその一文で締めくくられていた。 いつも貴方を想っています。 いつも貴方を想っています。 見知らぬ世界へ飛び込み、その困難さに心も体も疲弊し、だけどきちんと自力で立ち直っていく。 笑顔を取り戻し、また覚束なさや悔しさ、寂しさに泣き、世の無常を嘆き、成功に喜び。 だけどそれらの最後には必ず、その一文があった。 いつも貴方を想っています。 どんな時も傍にいるようだった。 Dive - Levi:attack on titan(連載最終話、その後) パチッと火が弾けたと同時にゴトンと薪が崩れ落ちる。 部屋の中には炎の熱気が充満しつつあるが、それは隣の部屋の話で ここではまだ、窓から侵食してくる冷気のほうが強かった。 世界を囲う壁の向こうに陽が隠れようとしている薄暗い中で、 彼女の黒い髪、まつ毛、瞳は闇に紛れ、そのまま溶けていきそうだ。 それらに余すことなく触れ、跳ね返す肌を撫で、香を記憶するように吸い込み、掴みとめる。 すんと冷たい空気が鼻を通ると痛みを覚えるのに その中に彼女の甘い香が混じっていればその痛みすら悦ばしく感じた。 火照った頬が冷えた指先の温度を中和して、心地よい。 リヴァイは初めて、口付けるという行為の意味を知った。 触れ合うとも、感じ合うとも違う。とにかく中へ中へ取りこみたい。 空腹の獣が獲物を見つけた時の高揚はこんな感じだろう。 出来るなら喰ってしまいたい。 柔く小さな口唇に痛いほど重ね、押しつけ、噛みつき、唾液を舐めてはより思った。 もっと。もっと。もっと中へ。 小さな口に押しつける内に、彼女の細い身体はリヴァイの力を支えきれずに倒れ ギシリとベッドのスプリングが音をたてた。 内から荒ぶり這い出てくる息を逃がしながら、すぐ目先の彼女を視界に入れると キスを受け止めながらも動揺し、頬を真っ赤にして襲い来る感情に耐えているような顔があった。 耳に口付けるだけで喉を絞るような悲鳴を上げる。首に鎖骨に触れるだけでビクリと跳ね上がる。 激しく打ち過ぎて壊れそうな心臓を護るように、胸の前でぎゅっと握っている手は 服を脱がせることも、それ以上の進行も妨げていた。 「おい・・・手。それじゃなんも出来ねーだろ」 「は・・・い・・・」 硬直した身体を抱き締めている腕をどかせようとしたが思いのほか力が強い。 堅く瞑っていた目は恥ずかしげに開いたが、彷徨って定まらず、声は今にも泣き出しそう。 そう緊張されると、こちらのペースまで崩される。どう扱えばいいのか分からなくなる。 そもそも・・・女の身体を丁重に扱おうなどと思ったことがないから、こちらも初心者と変わりない。 自分から膝の上に乗り上がってくるような女たちとはわけが違う。 力を込めれば傷つけてしまいそう。無理に押し通せば壊れてしまいそう。 泣かれるのだけは勘弁だ。難しい。 「力を抜け。手はここだ」 髪を撫でながら額に口付け、言い聞かせるようにそっと腕の力を解かせる。 掴んだ両手を誘導し自分の肩に乗せ、ようやくそれらしい形になる。 細い両腕はまだ焦れて、しっかりと抱き締めようとも触れようとも出来ないでいる。 すぐ目先で彼女の黒い瞳は合わさっては逃げ、揺れ動いてはこちらを覗き見て、 リヴァイは腹の底からじくじくと欲情が滲み上がってくるのを感じた。 「大事にしてやりてぇのは山々だが・・・、俺もそう余裕でもないらしい」 「え・・・?」 「無理なら言え。・・・だが極力我慢しろ」 「え・・・え、きゃ・・・」 リヴァイは彼女のドレスの裾を手繰り寄せると、彼女の脚に掌をつけながら遡った。 たがそこはまだ布一枚隔てた場所。脚の形だけ感じ取れるタイツの上。 実感したいのは生身の肌。弾力。質感。 リヴァイは彼女の開いている胸元をさらに解き肩からドレスを引き下げると 腰を持ち上げそのままひと思いにドレスを脱がせた。 それでもまだ肌には辿りつかない。 肌着に下着、どうして女はこうも身につけているものが多い。 まるで地中を掘削するように、リヴァイは邪魔な布をすべて取り払っていった。 服の内側に手が入り肌に添う温度を感じると、彼女はひと際大きく身体を響かせ悲鳴を上げる。 一枚一枚ベッドの下に服が落ちていって、彼女の緊張と羞恥は頂点を極めた。 わずかに震えているのは寒さのせいか、緊張のせいか。あるいは不安や恐怖か。 なんにせよ、そういつまでも焦らされていてはこちらの心身が持たない。 リヴァイは暴いた彼女の素肌の至る箇所に口付けながら自分のシャツのボタンを外し 身体を起こすとバサり、ジャケットとシャツをすべて脱ぎ捨てた。 視界がだんだんと暗く陰っていこうとしている室内で、 リヴァイの隆々と膨らんだ体躯が横たわる彼女の身体をまたぐ。 彼女はまつ毛を涙に濡らしながら、いまだ身体を護りながら、それでも 自分と同じように肌を晒すリヴァイを視界に入れて、何故だかふと・・・落ち着いた。 「怖いか?」 腰元に、腹に、胸に、リヴァイの手が肌を遡り撫ぜていく。 それすらも、先程までの緊張も羞恥もなく、彼女はふるふると首を振った。 「リヴァイさんが・・・きれいだから・・・」 「・・・」 彼女の身体に覆いかぶさりながら、リヴァイは思わず目を丸くする。 物理の話だろうと。比喩の話だろうと。 これほどまでに清らかで美しくもある彼女の前で。 綺麗だなどと。 「野郎に言うセリフじゃねぇな」 ぽつり落として、リヴァイは再び、深い深いキスを降らせた。 彼女の身体を構築しているすべてのものを、表皮も、血肉も、神経も、細胞にすら。 噛みつくように欲して、流れ星のように愛でた。 この重い冬雲の上に無数に瞬いている星を。まんまるに光り輝いている月を。 おそらくは誰しもが求め欲しているだろうけれど。 今宵はそこで、おとなしくしていてくれ。 世界のほんの小さな小さな一角にひっそりと存在するこの美しさは 誰にも見せたくない。 |