正しいリズム - Levi:attack on titan

(拍手ログ6の初夜つづき)


なめらかに滑る感触が手放せず、手の先から二の腕、肩から胸、
鎖骨から脇腹、内腿から脚の先に至るまで一縷の隙間もなく掌で撫でたくった。
柔な肉が沈めば沈むほど揉みほぐして、骨ばった部分は指先でなぞり、
隙間があれば入りたくなって、くすぐったいと止められても、いじくった。
今まで自然と動かしていた己の手であるのに、手首、親指、第一関節から第二関節まで
これほどまでに思い通りに動いてくれることに感謝したくなるくらい、存分に愛でた。

「ふっ、っ・・・」
「ここか?」
「ん、ぁ・・・」

手中の身体がピクリと反応すれば味を占めて狙いを定める。
口の中で閉じ込められていた息が毀れれば、今度は声が欲しくて攻めたてる。
真っ赤な頬と固く閉じた口を隠す彼女から次第に高くて細い声が漏れだして
じわり、汗ばんでくる肌が掌に吸いついてくるよう。
熱を上げる身体に体を重ね合わせ、冷えた空気の中、温度を混ぜ合わせた。

「ほら、腕」

いまだ涙目の彼女は、快楽を得ているとは言い難い。
切羽詰まって、ただただ襲い来る感触と感情に必死に耐えているような堅さ。
リヴァイは目下の彼女の壁のようでもある両腕を自分の肩に回させた。
濡れたまつ毛の奥から、彼女の黒い瞳が移ろいながらリヴァイを見る。
ドクドクと早すぎる心音が彼女の呼吸を乱れさせ、熱を炊きつけていた。

「大丈夫か?」

口先が触れるか触れないかの距離で、声にもならない音で問いかける。
一度こくりと息を飲んだ彼女は、小刻みに頷いた。
肌を人に晒すことも、自分でない手に触れられることも、自分とは違う硬い肌に触れることも
服を纏わずにふとんに包まれることも、自分すら触れたことのない部分に触れられることも、
彼女には未知の世界であり、この行為を快楽と感じるには、まだ時間が必要だろう。
ただ肌に触れるだけでこんなにも緊張し動揺してしまう彼女にこの先を強要するのは、
まっ白な洗いたてのシーツに真っ黒なインクを一滴一滴垂らすような非道にも感じた。
だけれども・・・じゃれあってばかりいられないのは男の性であり、
何より、無垢な聖域ともいえるその場所を侵すのは・・・穢れでもあり、恍惚でもあった。

「挿れるぞ」

呟くと、肌で感じ取れるほど下敷きになっている身体がまた緊張した。
柔肌を愉しんでいた指先がへそのくぼみを辿って滑り下り、ひたり、狭い隙間に侵入した。
指先にとろりと纏わりついた感触は、いじくっていた先ほどよりも一層濡れそぼっている。
背に回されている彼女の白い細腕がきゅっと締まり、そんな彼女の肩を抱きながら、
リヴァイは先走る腰を浮かせ、指を当てている個所に腰を近づけていった。



正しいリズム2 - Levi:attack on titan



「ッ・・・」
「まだ痛むか・・・十分濡れてんのにな」

暗い中で先をあてがい、模索するようにゆっくりゆっくりと押しあてていくも、
小さく狭い隙間には不釣り合いなそれの侵入を、そう簡単に許してはくれない。
ほんの数十分前に試みた時も、彼女の身体は涙をこぼすほど悲鳴を上げた。
一度止めて口付けと愛撫を繰り返し、十分に身体を絆して、快楽へと誘い、
こんなにもとろとろと毀れてくるほどに解し、熱を上げたというのに・・・
まだこの聖域は、異物の侵入を赦してはくれない。

「ッ・・・、ん・・・」

先程よりは多少進めたが、無理に進み過ぎると彼女の悲鳴が喉を締め付ける。
それは間違っても快楽からの悲鳴ではないことくらい分かる。
恥ずかしんでも抱き締めていた細腕が逃げたがっているよう。
悲鳴のたびに眉をしかめ、薄い口唇は痛く噛み締められ、温度を上げていた肌も冷える。
これまで一度だって、こんなにも女を抱くことが困難だったことなどなかった。
誰だって脚を開かせればすぐに入れたし、手間などかけずとも容易に誘い出せた。
だけどこの身体は違うのだ。これまでの体たちとは。
当然だ。それでもこの身体が欲しい。この体内に入り込みたい。
こんなにも欲情してしまっている己の身だって初めてなのだから。

「・・・無理か」
「・・・え・・・」

けど、どうしようもない。不慣れな身体を、無理に侵すわけにも。
リヴァイは身を引き彼女の身体から離れ、見上げてくる彼女にふとんをかぶせる。
ベッドから下り暗闇の中で立ちあがると、壁にかけられた上着に袖を通し寝室を出た。
窓から差し込む弱い月明かりでしか視界のない夜暗な部屋も出て廊下に出る。
足音が響く静かな夜更け。息も白くなるほど温度が低下している空気。
体内の熱さと肌の冷やかさ。混ざり合わない体で、リヴァイは手洗い場へ入った。

しばらくして部屋に戻ると、暖炉の火も燃え尽きていることに気がついた。
薪を放り入れ再び火をつけると微弱に明るくなる室内。
溜まっていた熱を吐き出し冷えた体を少し火に当て、彼女のいる寝室へ戻った。
覗くと、ベッドの上で起き上がっていた彼女がこちらに目を向ける。
胸にふとんを抱いてはいるが背中は白く月明かりに照らされていて、
リヴァイは彼女に寄っていった。

「ちゃんと被ってろ。冷えてんじゃねぇか」
「・・・」
「ん?」

彼女の背に触れると、ひやりと掌の温度を奪われた。
微弱に震えてもいる。こんな真冬に肌を晒して、当然寒いだろうに。
だけど彼女は傍に来たリヴァイを不安げに見上げるばかりで、言葉を発さない。

「なんだ」
「あ・・・あの・・・」

傍に寄り、冷えた身体を抱きながら一緒にふとんを被る。
腕の中で口ごもる彼女はそれ以上言葉が続かず、リヴァイは彼女を覗きこんだ。
薄い明かりに照らされる彼女は頬にまつ毛の影を下ろし、みるみる表情を歪めていく。
それは今にも、泣き出しそうなほど。

「なんだ・・・どうした」
「・・・」
「言わねぇとわからねぇよ」
「ご・・・ごめんなさい・・・」
「あ?」

ようやく震える口唇からこぼれ落ちた言葉は、謝罪。
それを口にした途端、彼女の瞳からこぼれ落ちる雫。
リヴァイはギョッと驚いて思わず涙を受け止めた。

「なんだ、何を謝ってやがる?」
「・・・ごめんなさい・・・わたし、ちゃんと・・・できなくて・・・」
「あ・・・?」

震える体は、寒さからか。それとも不安や恐怖からか。
止まらない涙を押さえて彼女は、ごめんなさいごめんなさいと繰り返した。

「泣くな、誰も責めちゃいねぇよ」
「だけど・・・ごめんなさい、ごめんなさい・・・」
「お前が悪いんじゃねぇよ、泣くな」

そうは言っても、彼女の悲愴は晴れずぐずぐずと涙に濡れる。
リヴァイは困り果て、とにかく冷えた身体を抱いてふとんをかぶり直し横になった。
肩も背中も髪さえもひやりと冷たくなっている。
寝室を離れたのは数分だっただろうが、ずっと肌を晒していたようだ。

「・・・」

ああ、そうか。とリヴァイは思った。
不慣れな状況に置かれ、緊張と不安を混ぜただただその行為に耐えていた彼女が、
出来なかった途端ひとり置き去りにされては、それは余計な不安を掻き立てたかもしれない。
しまった。完全に自分のせいだ。
リヴァイはいまだひんひん胸で泣いている彼女を撫ぜ続けた。
致し方なかった。あの時は自分のことが先立ってしまった。
あんな状態のまま、裸の彼女を横に眠れるわけがなかったから。
吐き出す他なかったから。

「お前は何も気に病まなくていいんだ。所詮俺はお前しか抱けねぇんだからな」
「・・・」
「楽しみが先に延びた。それだけのことだ」

抱き締め、髪に口づけながら言うと、ぐずぐずと毀れていた彼女の涙は止まり、
小さくなっていた身体がようやく腕を伸ばしぎゅっとリヴァイに抱きついた。
ポンポン撫ぜるとまた彼女は泣きだすが、今度は悲愴の涙ではないようだった。

(ずるいものだな・・・)

自分で思いながら、リヴァイはポンポン、寝かしつけるように彼女をあやし続けた。



white night - Levi:attack on titan

(完全出来あがったころ)


今夜は満月だったか、窓から差す光がやけに明るい。
空を見上げる間もなくベッドに入ったから夜の明るさなど気がつかなかった。
ランプが燃え尽きれば何も見えないはずの室中が薄ぼんやりと照らされている。
いつもならすべてが闇に飲まれる夜なのに、今はこの漆黒の髪だけが唯一色を持っているよう。
リヴァイは寝息で揺れる彼女の髪に触れ、長い毛先までをそっと指に梳き通した。
頭の上にある窓から照らす光が、目を閉じている彼女の頬にまつ毛の影を下ろしている。

強さしか知らなかったこの手が、いつの間にこんな弱さを覚えたのか。
傷つけてしまわないようにそっと撫でる。起こしてしまわないように優しく触れる。
空気を吸い込んでは吹き出すごとに起伏する肩が冷えないようふとんを引き上げる。
夜は眠るためにあったはずなのに。
こうして眺めている寝顔は、これまでに見たどんな夢より清らかで穏やかで、温度があった。
指に絡め取った髪先を口に寄せ、口唇にそうするように甘く食む。
つい数時間前まで嫌というほど繰り返したのに。星の数よりたくさん降らせたのに。
飽きもせずまた口付けたくて、でもこの安らかな眠りを護りたくもあって、身も心も焦れた。

・・・そんなまどろみを破壊する音が遠くから近づいてくる。
ゴツゴツと厚いブーツの底が床板を踏みしめる音。
昼間なら目立ちもしないその音は深い夜には耳触りで、リヴァイは眉間の皺を深くした。
一直線に近づいてくる足音は最も近いところで止まり、極め付けに扉をゴンゴンと叩いた。
リヴァイは枕に頭を沈ませている彼女の下から力の限りそっと腕を引き抜く。
ベッドを沈ませないよう、音をたてないよう静かにふとんから出る。
春先の夜気は少々肌寒く、リヴァイは壁かけから羽織を取りノックされ続けている扉に向かった。

「なんだ」
「夜分にすみませんリヴァイ兵長」

扉を開けると廊下は月明かりのある室内よりずっと暗かった。
隙間から顔を覗かせる兵は声と姿形でモブリットだと分かる。

「例の捕獲した巨人の夜間実験で少々問題が」
「何やらかしやがった、ハンジの野郎」
「ご足労願います」
「すぐに行く。先に行ってろ」

了解するとモブリットの足音は遠くへと消えていく。
チッと舌を打ちながらリヴァイは肩にかけていた羽織を椅子に放り、寝室へと戻った。
ベッドの中の彼女はこちらに背を向けたまま、月明かりに護られるように眠り続けている。
健やかな眠りを見下ろしながらベッドのヘリに腰を下ろすリヴァイは躊躇いながら彼女に触れた。
横顔にかかる髪をかき分けながら名を呼び、すやすやと穏やかだった寝息を壊す。
2度目の呼びかけでまつ毛を揺らした彼女は一定だった呼吸を崩し、宵闇の中でリヴァイを探す。
移ろう黒い瞳は頬に当たられている掌の温度に気付き、リヴァイを見上げシーツに背をつけた。

「悪いが少し出てくる」
「・・・どちらへ・・・」
「仕事だ。2・3時間ほどで戻れるだろう」
「わたしは・・・」

まだ眠りの世界にいる彼女の声は夜の帳に添うようにささやか。
覚めきらない意識と弱い光を滲ませる瞳でリヴァイを求め、頬の手に触れ返した。

「お前はこのまま寝てろ。心配するな、誰もこねぇよ」
「はい・・・」
「一人にしてすまねぇな」

きちんと言葉を聞き取っているのか、目を閉じてしまう彼女はゆるく首を振った。
ただリヴァイの手に触れている白い手だけはしっかりと意思を持つように力がある。
まだ朧な世界にいる彼女を撫で、リヴァイは前髪ごと額にしっとりと口唇を下ろす。
月明かりにさらわれそうな彼女をベッドに縫い付けるように、頬に口唇にキスを降らせた。
力の入らない口唇でそっとキスを返す彼女から惜しんで離れる。
気の乗らない身体を立たせ、リヴァイは床に散らばる服を拾い上げた。




cycle - Levi:attack on titan

(アダルティ。※女子デーネタ注意)


乾いた石の壁は、ひとつ角を曲がり陽が当らなくなれば突然温度を下げる。
明るい廊下の方で滲んでいる光と兵士達の雑談の声すら遠ざけるよう。
けれども一本奥のこの通路の先は壁外調査後に使用される遺体安置室しかないために、人通りはなく空気は滞り実際より温度を低く感じさせた。

その空気の間を縫う、生気のある呼吸音。
ちゅ、ちゅ、と肌に吸いつく音は声よりも大きく響くようで、脳内を熱く放蕩させる。
甘く食んでいた口唇がいつの間にか強く食らいつく。
舌で口唇から口内まで侵入し、舐め回しては吸いついて、息を吐き出す間もなく押しつける。

は・・・は・・・

味わう口唇がようやく離れ、僅かに出来た隙間で双方の苦しい呼吸がぶつかり合う。
口唇を重ねるだけで頬は紅潮し身体は熱を上げ、背にしっとりと汗を感じた。
頬を撫ぜていた指で柔らかな口唇を拭い、リヴァイは親指についた湿りを舐め取る。

「ヤベェな・・・」
「え・・・?」

掌中に収まってしまいそうな彼女の顔を両手で包み、前髪が触れる程にまた近づくと、頬を赤らめ俯いていた彼女の黒い瞳が見上げてくる。
こんな薄暗い閑散とした場所でも、その潤んだ瞳は僅かな光を反射しまるで虹を携えていた。

「離れらんねぇな」

その瞳に近付きまぶたに口付ける。
熱を持った頬を撫ぜ耳の形を辿り零れた髪の先までを絡み取り、彼女のパーツのひとつひとつを形、肌質、柔らかさを感じ取り、その至る所すべてへ音を立てて口付けると、手中で硬直する彼女の身体が息を漏らしそわりと逆立った。

仕方ない。この肌に触れるも、瞳に映るも声を聞くも久方振りだった。
人里離れた古城での生活は監禁に近い。
今日みたく招集命令でも受けなければ班員以外の人間にも出会わない。
そんな数日振りに訪れた本部で見つけた、彼女。
これまで同様兵士達の治療に訪れる彼女は、自分がいない間にだって当然ここを訪れている。
いないのは、自分の方。

「リヴァイさん・・・」
「ん」
「ここでは・・・」
「なら来るか、俺の部屋」

普段通り兵に囲まれ献身的に治療し、絶えまない笑みを持って兵達を癒し励まし支えている。
けれども、誰も知らぬだろう。
この清廉な彼女の白衣の中にこんなにも艶やかな柔肌があること。
キスひとつで頬を赤らめ身体を緊張させ、瞳を甘くとろけさせること。
この赤く小さな口唇がこんなにも柔らかいこと。
喉の奥からどうしようもなく零れてくる吐息のような細い声。

「今日は・・・」
「ん?」
「ダメ・・・なんです」
「なんで」

頬に耳に首筋にちゅ、ちゅ、と音を立てながら滑り落ちていき、しっかりと喉元まで止められているシャツのボタンに手をかける。ぷつりひとつ外し隠れていた鎖骨に口付けると、ぴくり感じた彼女はさらにボタンを外そうとするリヴァイの手を止めさせた。

「今日は・・・先生と一緒に来てますから、帰らないと・・・」
「自分で言えねぇなら俺が言ってやる」
「・・・」
「なんだ、まだ何かあんのか」

彼女は躊躇いリヴァイの進行を止めようとするが、その抵抗も厭わずリヴァイは彼女の細腰を引き寄せ身体をぶつける。
もう完全にイメージの中に入ってしまった。
この身体を抱き締めるイメージ。この衣服を取り払うイメージ。
ベッドの中で肌をぶつけ合うイメージ。蕩ける彼女を味わうイメージ。

「あ、の・・・」
「なんだ。ハッキリしねぇとここでおっぱじめちまうぞ」

繰り返す口付けを離し、リヴァイは俯く彼女をくいと上げさせる。
場所を躊躇っているのか。時間を躊躇っているのか。環境を躊躇っているのか。
彼女は一度リヴァイに目を合わせたもののすぐに移ろい、その小さな口唇を震わせて言い淀む。
心も体も逸るリヴァイはまた一度なんだと問いただした。

「げ・・・」
「ん?」
「・・・月経・・・中・・・で」
「なに?」

零れてくる言葉よりも震え動いている口唇。
しかしリヴァイにはその零れてきた言葉が理解できなかった。
でも何か、彼女はとんでもない事を口走ったかのように酷く恥ずかしがっている。
頬を赤らめ俯いていたのは肌への刺激のせいではなかったか。

「その・・・せいり、中で・・・できないんです・・・」
「・・・」

酷く言い辛そうに、身を小さくする彼女はさらに頬を紅潮させ俯く。
彼女が何とか吐き出した言葉を頭の中で繰り返し、リヴァイの中でようやく言葉と記憶が合致した。

「ああ、あの恐怖現象か」
「きょうふ・・・?」

体から延々血が流れ続けるとか、突然ヒステリックになるとか。
リヴァイでなくとも男には不可思議な現象でしかない。
これまでも彼女が昼間であることや仕事中であることに抵抗を示したことは何度もあったが、彼女が抵抗を頑なにしない時は押し通していたし、どうしようもない時の要求は聞き入れてくれていた。今度はそういうわけだったかと納得がいった。

「で、それは、なんだ、やっちゃまずいのか」
「マ、マズイというか・・・、汚いし、気分よくないでしょうし・・・」
「そりゃ俺サイドの問題でお前の問題じゃねぇだろ」
「はあ・・・」

彼女の背にしている壁に手をつくリヴァイは、先程までと変わらずに距離を詰めようとして彼女は焦った。まさか、そんな選択肢があるなんて思いもよらなかったからだ。気まずくなるか、そうでなくとも理解して引いてくれるものだと思っていた。

「それは、良くは、ないかと・・・。専門的に調べたことはないので、詳しくはわからないですけど・・・」

身を引こうにも後ろには壁しかなく、彼女は頬に触れる髪すらこそばゆく感じてくしゃり髪を押さえ肌をこする。
そんな彼女の反対側の頬にリヴァイは再び指先を滑らせた。
その指先が肌に触れるか触れないかの位置で彼女はビクリと反応し肌を逆立てた。

「ほらな」
「え・・・?」
「さっきからお前、随分と敏感じゃねぇか」

まるで外れない眼線と覆い隠しもしない口調に、かぁっと彼女は頬を熱くし言葉を詰まらせる。
当然、自分の身体だ。自分が一番感じ取れていた。
リヴァイの手が触れる前から。リヴァイの声を耳に受けた時から。リヴァイの空気を嗅ぎ取った時から。
ドクドク逸る心音が物語っている。

「どうする」
「っ・・・」
「無理ならそう言え。そうでもねぇなら、」

低く届く声が耳に入りこみ神経を辿って脳へと浸透する。
言葉と共に出てくる吐息すら、肌に感じてこそばゆい。
近づいてくる手に、眼に、香に、くらり、眩暈を起こしそう。

「今のお前・・・すげぇ抱きてぇんだが」
「ッ・・・」

乾いた空気。空中を踊る埃。硬い石畳の床。冷えた温度。遠くの光。人の声。
すべてを細かく感じ取れる。
そのくらい研ぎ澄まされた神経が、目の前で多大な存在感を放つリヴァイを、避けて通れるはずが無い。

ガンガンと頭の中で反響する心音が、自分で放っていながら自分に返ってくるよう。
言葉も選べず、見返すことも出来ず。
けれども、身体の奥底から這い出てくる痺れを逃がすことも出来ず、感情に呑みこまれる彼女の黒い瞳に発熱と欲情が涙となって襲いかかった。

「あー、悪いな、返事はなくていい」

どうとも出来ない彼女を見下ろして、リヴァイは彼女の髪を優しく撫ぜる。
ふとひとつ呼吸が出来た彼女はゆっくりと目を開け、見上げた。

「お前がノーと言おうがもう決めた」
「え・・・?」
「今すぐ頂戴する」

我儘に引き寄せ、彼女の息と熱と言葉ごと、くつくつと悦ぶ口で口唇を塞いだ。
体の奥底から滲み出る感情を煽り彼女から正常な動作を奪った。
何も理解できない。リヴァイの口付けひとつ、愛撫ひとつ、舌先ひとつが全神経を凌駕する。
正しい心が目を覚ますより先に、リヴァイは邪魔の入らぬうちに彼女を連れ去った。




(身体に良くないので良い子はしてはイケマセン^0^)