ねー、また出たってー。 今度は何? 体育館。 うわ、またー? そういえば、3組の子入院してんだけど、あの子バスケ部らしーよー。 えー、こわー。 やっぱタタリだよ・・・。 STAND BY YOU!! プロローグ:はじまりの鐘(ゴング) ![]() 『友愛・自立・向上の精神、礼儀を重んじ個性を伸ばす』 私立、六鎖学園中等部。 「若菜、お前今度の追試で50点以下取ったら留年だからな」 「ぅえっ!!」 予感はしてたが、そうまっすぐに言葉にされると心臓にくるな。 グサァッ!!と・・・。 「お前郭がいるだろ、郭が。勉強教えてもらえよ」 「はっはっは、何をおっしゃる。あの英士が俺の勉強に時間割くわけないじゃん」 「甘やかさないあたり郭らしいけど、はっきり言ってそんなこと言ってる場合じゃないからな」 「またまたぁ、そーやって俺を急かそうとして!」 「・・・。じゃあ来年もまた会おうな」 「・・・」 あ、シャレじゃないみたいだ・・。 「あーあ、べんきょーべんきょー。なーにが個性を伸ばす、だよ。結局勉強できないヤツはそーやってハジくんだもんなぁー」 「じゃあお前の個性ってなんだ?」 「え?えーと・・・」 「ほれ、言ってみろ」 んーと・・・スマイル? 「自信持って集中してるものなんてないだろ?だったら勉強して少しは点数稼げ」 「そーんな事言ったって!じゃあ英士や一馬は何してるってのさ!」 「あの二人は何してる以前に勉強できてるだろうが」 「・・・」 やっぱ勉強だよ。カッコつけた事言ったって、やっぱ勉強できるヤツには甘いんだ、学校っていうのは。 「お前も何か、集中できて結果が残せるか人の役に立つかすれば話は別だけどな」 「しゅーちゅーねぇー・・・」 「勉強勉強言われるのがイヤなら、何か見つけたらどうだ?」 「うーん・・・」 まぁ、テストで50点取るよりかは、何か見つけたほーがラクだよなぁ。 でも、かといって俺になにができるよ? うーん・・・。 「あ、結人聞いたー?」 「なになに?」 教室に入るや否や、クラスの女子が寄ってきて口を開いた。 女子の噂話って面白いよなー、どっから仕入れてくるんだってくらい深いものから、そりゃありえねーだろーって感じの夢物語まで、豊富にいろいろ揃えております、なんて、ド○キホーテみたいだ。 「また出たんだって、体育館の幽霊」 「幽霊?なにそれ?」 「え!結人知らないの?遅れてるー」 「なになに?教えてよ」 遅れてる、なんて言葉はいただけないぞ? この俺とした事が、このいかにも旬な話題についていってないなんて! 「最近多いんだよ、幽霊騒動。夜中に体育館からボールを着く音が聞こえるとか、生徒会室で窓叩く音がするとか物が倒れてくるとか、実習棟の階段を数えて13段目があったらその先はあの世につながってるとか!」 ああー、つまり、学校七不思議ってやつですか。(小学校か?ここは) 「てかなんでまた今さらそんな話で盛り上がってるわけ?」 「あ!結人信じてないんだ!ホントなんだから!幽霊見たって子がすっごいいっぱいいるんだよ?同じ子が短期間で何回も事故に遭ってるとか!」 「そりゃー単なる不幸な人じゃないのー?」 「そんなこと言ったら結人も呪われるんだから!」 「呪われたくねーけど、幽霊は一回見てみたいよな」 カワイイ好奇心として? でも俺ってそういう話は面白いからダイスキだけど、イマイチ信じてないんだな、これが。 「どうしよー。あたし怖くて学校一人で歩けないもん!暗くなった後なんて死んでも来ないし!」 「部活してるヤツとかいるじゃん。先生だっているし、見回りのおっちゃんだっているし」 「そんなの意味ないんだって!行方不明になっちゃった子だっているんだから!」 「家出じゃないのー?」 「もー!結人なんか呪われちゃえ!!」 どうやら、最近周りでよく見かけるコソコソ話は、そういう話題らしい。 みんな怖がってるけど、怖いもの見たさで夜中に肝試しとか、こっくりさん?とか、やってるヤツが増えてるという。あまりに増え続けるもんだから、集会が開かれて学校から直々に全校生徒に放課後居残り禁止令まで言い渡されるほどだ。 なんてったって俺たちは、好奇心のカタマリ。それがあってナンボの生き物だから仕方ないといえば仕方ない。 「なぁ英士、どー思う?」 「悪い事が続くと人はすぐに何かのせいにしたがるもんだよ」 「あ、あるなそういうとこ!でもこの騒ぎようは尋常じゃないよな。なんでいきなりこんなに騒ぎ始めたんだろ。なぁ一馬?」 「え?」 「なんだよ、聞いてなかったのかよ俺の話!」 「聞いてたよ」 「あー!さては一馬、ビビってんじゃねー?」 「はぁ!?ビビってねーよ!」 「どーだかなー、じゃあ今日肝試しでもするー?」 「・・・。俺、部活あるし」 「あ、逃げた」 「部活って言ったって週一の書道部じゃない」 「うるせ」 この学園に入学して以来仲のいい英士と一馬。2年になって俺だけクラスが離れたけど、それでもこうして仲良しこよしだ。そんな俺たちは、3人揃って学校全体を包むブームに乗り遅れていたようだ。ちょっと耳を傾ければ、どこもかしこもその話題だというのに。 「もうホントやだー。部室の鍵返しに行くのも怖いもん」 「絶対なんかあるよね」 「3年の人、とうとう学校来なくなっちゃったんだって」 「あ、あのお化けに取り憑かれたって人?」 「人呪うお札作ったり、ヘンな呪文つぶやいたりするんだってー」 「やだー」 でも中には本気でビビってるヤツが結構いて、噂もここまで来るとシャレになんねーなと思う。 「でも七不思議って確か七つ全部知っちゃうと死ぬんだよな?」 「でもみんな4つか5つしか知らないよね」 「だって知ったら死ぬんだろ?」 「ぷっ・・・」 「なんだよ!」 一馬があまりに本気で言い返したものだから、俺と英士は吹き出してしまった。 「でもみんなの知ってる七不思議が全部一緒って事ないよな?」 「どういう事?」 「だから、一人が七不思議の内の3つを知ってる。別の一人も3つ知ってる。また別のヤツも3つ知ってるとするだろ?でもそれが全部一緒で、七不思議が七つとは限んないわけだ」 「ああ、なるほどね」 「全部聞いたら10も20もあるかもしれないよな。それ全部集めたらおもしろくね?それで、それが全部嘘だったって分かったらこのブームも落ち着くんじゃね?」 「・・・何が言いたいの?」 「へへー、その七不思議、俺たちで解明するってーのはどーだい?七不思議解明サークルって立ちあげてさ!」 「「・・・」」 二人は俺”たち”という部分に引っかかりロコツにいやな顔をした。 「そんなの学校側が許すわけないでしょ。放課後無駄に教室残るのを禁止するくらいなのに」 「それにお前、そんな事してる場合じゃないんだろ?留年しそうだってのに。中学にして」 「だからじゃん!本気で怖がってるヤツもいるんだから、不安を取り除いてみんなが快く学校生活をエンジョイできる環境を提供する。先生たちには放課後コックリさんしたりするヤツを取り締まる役目も請け負うとか何とかいってさ。先生にも生徒の役にも立つ、これほど友愛を思い、未知のものに挑むスピリチュアルを鍛え、誰も手をつけない個性を引き出す絶好のチャンスだとは思わないか!?」 「「思わない」」 「いーや、これは全校生徒の役に立ついいチャンスだ!人の為に努力し、集中し、引いては結果を出し役に立つ。コレだけ揃ってれば少々テストの点が悪かろうが構わねーだろ!そう思わねぇ!!?」 「「思わない」」 二人を追いかけてしつこくしつこく言ってみても、やっぱり二人は俺に賛同してはくれなかった。 英士はたぶん呆れてるか見放してるんだろうけど、一馬は絶対ビビってるな。 「よーし、俺は学校中の不安と闘おう!!そしてみんなに温和で清らかな学園生活をもたらすヒーローとなるのだ!幽霊討伐!!学園防衛隊だ!!俺レッドな!!」 「勝手にやってよ」 「バカみてぇ」 「なーははは!そーと決まれば情報集めからだ!!行くぞ一馬!!」 「行かねぇよ!!」 キーンコーンカーンコーン・・・ そうして学園中に、俺たちの学園生活の平和を守る闘いのはじまりのゴングが響き渡るのだった!! |