LESSON16 - Begin

 夏が近づき徐々に気温も高まっている。
 過ぎゆく生徒たちもジャケットを脱いだり袖をめくりあげたりと夏の様相となる雄英。

の記事だいぶ削除されてたな。きのう見たものも今朝には見れなくなってたぜ」
「だな、さすが情報規制」
「だがヒーロー殺しの動画もアップ・デリートの繰り返しだからな、根絶されはしないだろう」

 朝の教室に続々と集まってくるA組生徒たち。
 世間や学校内の話題はヒーロー殺しが主だが、ここでは違った。

「ええー、ズルーイ!」
「ズルイって言われてもな」

 廊下から響いてくる葉隠の声にA組生徒たちがドアの方を振り返ると、もうすっかり夏服の葉隠と、シャツの襟を立て首にネクタイをかけようとしているが教室へ入ってきた。

「よーおはよう、ズルイって何が?」
「おはよー! だってちゃん、毎日朝も晩もごはんはランチラッシュが作ってくれてるんだよ? うらやましい!」
「あ、やっぱ!? 学校に住んでるってからにはそうなのかなって思ってたけど」
「風呂はどうしてんの?」
「更衣室のシャワー使ってるんだって!」

 みんな少しはどう接しようかと案じていたが、葉隠の明るい声と一緒に入ってきたから気軽に話しだすことが出来た。質問には葉隠が答えるからはネクタイを結んでいるだけだけど。しかしそんな輪に飯田がわなわな震えながら割り入った。

「どうした飯田、まだチャイム前だぞ」
くん……、ついにネクタイを結べるようになったのか……! 僕は嬉しい!」
「あ、そこか」
くんが出来たところで、次は君だ! 克服したまえ爆豪くん!」
「ああ!? 結べるわボケ!」
「ネクタイ締めてまたハチニーに分けてこいよ爆豪!」

 ビシッと爆豪を指差す飯田の周りでげらげらと笑いが起こる。

「おはようさん」
「おはよう」

 ネクタイを締め、席に着くのうしろで緑谷が声をかける。
 傍ではまだ笑い声が上がっていて、賑やかな中には小さなの声だけど、とくに気負う様子もなく普段通りに見えるなと緑谷は安心した。

「でもさ、学校に住むってけっこー怖くね?」
「ああー、学校って日が暮れると不気味だよな」
「俺中学ん時忘れもんして夜の学校に行ったことあったんだけどさ、もうビビったわ」
「なんで?」
「え? いや、ほら、普段明るい学校が、暗くて静かだとどことなく……」
「……」
「頼む、そんなコイツバカ? みたいな目で見ないでくれ! いっそ罵ってくれ!!」
「なぁ、きのうの救助レース1回目どうやったんだよ?」
「そうそう、画面に映ってなかったからわかんなかったんだよね」
「おまえの個性ってどんななの?」

 畳みかけるように飛んでくる言葉にはざりざりと頬を掻いた。

「まぁ、大体誰がどこにいるかくらいは分かるよ。位置とか距離とか」
「やっぱ感覚系か」
「特に人の視線なんかは気持ち悪いくらい気に障るんだ。あんまりこっちを気にしないでくれ」
「あ、なるほど……わかった」

 予鈴が鳴りみんなが席に戻っていく。
 周囲からの視線が治まりごしっと頬をこすると、前の席の爆豪が背中越しに吊りあげた目でこちらを睨んでいた。

「なんだよ」

 が言うと、ふんと爆豪は前を向いた。
 めんどくさいやつだな。
 恨み辛みの思念は特に突き刺さり気色悪い。

「そろそろ夏休みも近いが、もちろん君らが一ヶ月休める道理はない」

 本鈴と同時に相澤が教壇に立ち、朝のホームルームが始まる。
 生徒たちはピリッと緊張するが、沸々と湧きおこる期待も抑えられない。

「夏休み、林間合宿やるぞ」

 知ってたよ! ヤッター!!
 生徒たちは立ち上がって喜び盛り上がる。
 合宿といえど肝試し、花火、カレーとイベント盛りだくさんの行事だ。

「自然環境ですとまた活動条件が変わってきますわね」
「いかなる環境でも正しい選択を、か。面白い」
「寝食みんなと! わくわくしてきたー!」
「ただし、その前の期末テストで合格点に満たなかった奴は補習地獄だ」
「みんな、がんばろーぜ!!」
「女子がんばれよ!!」

 わーわーと盛り上がるクラスはいつも通りだった。
 窓際の席で外を眺めているも普段通り。
 今このクラスに泪がどう混ざりつつあるのか読み切れないが、相澤は触れないことにした。

 午前中の通常授業が始まり、期末テストを目前に生徒たちはカリカリとひたすらペンを走らせていた。期末テストは通常科目に加えヒーローとしての法律や規律を学ぶヒーロー情報学の筆記テストが3日間、そして内容の知れない演習テストがありその総合点で順位付けされる。

ちゃん、一緒にお昼いこ!」

 体育祭から職場体験とイベント続きだったヒーロー科生徒たちは、それでもコツコツと自力で勉強に励んでいたか否かで大きく成績が左右される。中間テストで20人中半数以下の順位だった生徒にとって、この林間合宿がかかった期末テストは大きな分かれ目でもある。

「後で行くよ。人が多いの嫌なんだ」
「あ、そか。じゃあ私も!」
「行きなよ、ハラ鳴ってるだろ」
「バレたか、へへ」

 じゃあみんなと先行ってるね!
 手を振って葉隠は他の女子たちと一緒に教室を出ていった。
 教室から人が減っていって、足音たちが遠くへ消えていく。
 は腹の底から息を吐きだし額をごしごし拭った。

 期末テストまであと数日となったある日の放課後。すっかり日は落ち外は暗く、もう生徒は全員帰宅している雄英で、校長、相澤、オールマイト、ミッドナイト、13号ら教師陣はそれぞれに資料を手に会議室へ集まっていた。

「ヒーロー殺し・ステインとヴィラン連合とのつながりによる、ヴィランの活性化の恐れ……か」
「もちろん、それを未然に防ぐことが最前ですが、学校としては万全を期したい。これからの社会、現状以上に対ヴィラン戦闘が激化すると考えれば、ロボとの戦闘訓練は実戦的ではない。そもそもロボは、入学試験という場で人に危害を加えるのか……等のクレームを回避するため」
「無視しときゃいいんだそんなもん。言いたいだけなんだから」
「そういうわけにもいかないでしょ」

 会議室では、これまでになかった雄英が敵に直接攻撃を受けるという事態を鑑み、期末テストの見直しがされていた。いまだ解決を見ない敵連合との悶着は今後もあるだろうと十分予想される。

「試験の変更理由は分かりましたが、生徒を二人一組にし、我々教師と戦わせるというのは……」
「ええ、少し酷だと思います」
「俺らがあっさり勝っちまったら点数もつけられないよ」
「もちろんそのあたりを考慮して教師側にはハンデを着ける予定だ」

 教師同士でも意見の分かれる、新しい試み。
 しっかり時間をかけてヒーローとしての素地を作りたい1年の、それもまだ前期の期末テストという早い段階で、ここまで叩き上げて良いものかどうか。

「校長、いかがでしょうか」
「いかがもなにも、僕は演習試験の内容変更に賛成してるよ。これ以上生徒たちを危険に遭わせないために、我々は何をすればよいか。答えは簡単。生徒自身に強くなってもらうことさ」

 雄英高校、校長の根津の言葉に教師陣は合意し、演習テスト内容見直し案が通った。

「では組の采配についてですが、まずは轟と。轟は一通り申し分ないが、全体的に力押しの嫌いがあります。よって、俺が個性を消し接近戦闘で弱みをつきます」
「待って、それならとペアというのはおかしいんじゃない? 接近戦闘ならの得意とするところでしょう。あの子と組ませたらむしろその弱みをカバーし合うことになるわ」
「それに気付けば合格点です。轟と、この二人のウィークポイントは互いに他の人間をサポートとしてしか見ていないところにあります。どちらも自分自身の力で戦い抜けるという強い自負がある。そこを突きます」
「手を組みはしないということか」
「けど、随分しんどくなるんじゃない、これ」
に関して言えば、雄英に入る条件をまるで実践できていない様子なので、そこをもう一度叩きこみます。あと個人的な話ですが、今のあいつは俺に相当鬱憤が溜まってると思うんで」
「何したの、相澤くん」
「善処したつもりですがね、あいつにとっちゃ屈辱だったようです。一度ここらでガス抜きさせます」
さんのことは他の生徒同様、相澤くんに一任してるよ。頼んだよ」

 校長の言葉にどうもと返す相澤は2組目の説明に移ろうとした。

「話は逸れるけど、さんに関するあの可能性はどうなのかな」
「はぁ……」
「僕は正直……USJの時は焦りました。僕はさんに会ったのあの時が初めてで、話に聞いていただけだったので……」
「オールマイト、君はどう思う?」
「ええ……、私は今のところ、少女に対し懐疑はありません。確かに他の生徒のように晴れ晴れとヒーローを目指し精進している、という雰囲気ではまだないですが、彼女は彼女なりに何かを見つけようとしているような印象を受けました」
「何かとは?」
「はっきりとは分かりません。しかし、私はあの子を疑うよりは信じたい」
「私もです。はまだ戦っている最中です。クラスに入ってまた環境が変わり不安定になってもいるように感じました。今必要なのは我々大人がきちんといるという認識を持ってもらうことです。助けとしても枷としても」
「しかし我々は彼女を監視しなければならない」
「酷なことだよ。せっかくこの雄英の生徒として迎え入れたというのに、教師が生徒を疑わなければならないなんて」

 会議室に一抹の沈黙が広がったが、話を戻しますと相澤が断った。
 次に緑谷と爆豪ですが、この二人は……
 その後もA組生徒たちの演習テストの細かな説明とチェック事項を照合しながら夜は更けていった。

 そして迎えた期末テスト。
 中間テストで下位の成績だった者は大慌てで詰め込みとにかく空欄を無くすことに躍起した。筆記テストは3日間続き、頭を抱える者、すらすらと答えを埋めていく者と表情の明暗は分かれたが、全員が乗りきった。

 そうして筆記テストが終わった翌日、演習試験の日がやってきた。
 実技試験会場へとやってきた生徒たちはそれぞれにコスチュームを身に纏い中央広場に集まっていた。

「それじゃあ、演習試験を始める。この試験でももちろん赤点はある。林間合宿行きたきゃみっともないヘマはするなよ」

 相澤からの檄が飛ぶ中、耳郎は試験監督の教師がやけに多いことに気がついた。相澤やオールマイトといった普段ヒーロー基礎学を担当している先生たちはともかく、英語担当のプレゼントマイクや古文担当のセメントス、美術担当のミッドナイト、他にも普段なじみの少ないエクトプラズムやスナイプと錚々たるメンツ。

「諸君なら事前に情報を集め何するか薄うす分かってると思うが」
「入試みたいなロボ無双だろ!?」
「花火ー! カレー! 肝試しー!」

 仮想敵のロボなら楽勝だ! とすでに余裕モードの上鳴や芦戸は頭の中はもはや林間合宿に飛んでいる。しかしそこに水を指す校長の登場。

「残念! 諸事情があって、今回から内容を変更しちゃうのさ!」
「変更って……?」
「これからは対人戦闘、活動を見据えたより実戦に近い教えを重視するのさ。というわけで、諸君らにはこれから二人一組でここにいる教師一人と戦闘を行ってもらう!」

 先生方と……!? 想定外の内容変更、その上まさかプロヒーローでもある教師たちとの戦闘と聞き、生徒たちの間に一瞬にして動揺が走った。

「尚、ペアの組と対戦する教師はすでに決定済み。動きの傾向や成績、親密度、もろもろを踏まえて独断で組ませてもらったから発表していくぞ。まずは轟とがチームで、俺とだ」

 相澤の発表に轟は驚く。
 相手が相澤ということにも、ペアがということにも。
 その後も続々とペアと対戦教師が発表され、生徒たちは固唾を飲んだ。

「試験の制限時間は30分。君たちの目標はこのハンドカフスを教師にかけるorどちらかひとりがステージから脱出する事さ」
「先生を捕えるか脱出するか……。なんか戦闘訓練と似てんな」
「ほんとに逃げてもいいんですか?」
「とはいえ戦闘訓練とはワケが違うからな! 相手はチョー格上!!」
「今回は極めて実戦に近い状況での試験。僕らをヴィランそのものだと考えてください」
「会敵したと仮定し、そこで戦い勝てるならそれで良し。だが実力差が大きい場合、逃げて応援を呼んだ方が懸命。轟、飯田、緑谷、おまえらよく分かってるはずだ」

 相澤に言われ、3人はヒーロー殺しと戦った時のことを思い出す。
 あの時、あまりに強すぎる敵と対峙することになり、全力を出すもまるで勝機を見出だせず、かといって逃げる隙も与えてくれそうにない敵相手に防戦一方で、運の良さと相手のミスの上に得たギリギリの勝利だった。それで飯田は後遺症の残るケガを負ってもいる。戦って勝つか、逃げて勝つか。判断力が試される。

 プロヒーロー相手に戦って勝つより逃げる方が断然勝機は明るい。
 多くの生徒たちはそう思うだろう。しかしただ逃げるだけでもテストにならない。それはあくまで戦略の上の逃げでなければ。そこで教師たちにはそれぞれ自身の体重の半分の重りを両手足に装着しての演習となった。ハンデを負わせることでプロヒーロー相手でも戦闘を視野に入れさせようという魂胆だった。

「よし、チームごとに用意したステージで試験を始める。移動しろ。その間に作戦の相談は自由だ」

 発表されたペア同士、互いの個性で組み立てられる作戦を相談し合いながらそれぞれの演習場へと移動していく。その中で轟はを探したが、すでに泪は演習場に向かって歩き出しており、轟もそれに続いた。

 轟とペアの演習ステージは一般的な住宅街だった。
 細い路地や空き地もあり身を隠すにはうってつけの舞台だが、戦闘となるとやり辛さもある。

「相澤先生が相手なら、この試験、どっちが先に相手を見つけるかが鍵だ」

 スタート位置につき、轟とは合図を待つ。

「おまえ、誰がどこにいるか分かるんだろ?」
「ああ」
「ならまずは相澤先生を探してくれ。視認でき次第俺が引きつける。そしたらおまえは脱出ゲートへ突っ走れ」

 ああ。隣に立つから返ってくる言葉はそれだけ。
 対人戦闘訓練の時もそうだった。まるでやる気のなさそうな態度。けどそれでも自分の氷結は効いていなかった。確認はしていないが、動きの素早さはあるんだろう。警棒のような武器は携帯しているが使っているところは見たことが無い。救助レースでもそうだったように、脱出ゲートまで走ってもらうのが最善だ。
 ただ。

「おまえ……」

 轟が言いかけた時、スタートの合図が鳴り響きが歩きだした。

「おい、相澤先生の位置は?」
「1.5キロくらいあっちのほうだ」
「ゲートは東だ。まずこっちも隠れながら相澤先生とゲートの間を取るぞ」

 二人は細い路地を行くが、は影に隠れる気配もなくすたすたと歩いていく。
 相澤はまだ遠いということなのか。戦闘訓練の時もそうだったが。
 しかしかと言って何も警戒しないわけにも。轟はそう辺りを見渡し歩いた。

「なぁ……、少し踏み入ったことを言うぞ」
「うん?」
「おまえ、個性拉致にあったんだよな。超常の力を狙った強引な略取」
「ああ」
「そのおまえが……、相手の位置や距離が分かる”だけ”の個性なのか?」
「……」
「救助レースん時、スタートと同時におまえを見失った。あれはどういうことだ? オールマイトの居場所が分かって一直線に向かえた、てのは分かる。けどどこにも見えなかったおまえが次の瞬間にはオールマイトの前にいた。あれがおまえの個性じゃないのか」

 少し前を歩くが足を止める。けど何も答えない。振り向きもしない。

「悪い」
「?」

 呟いては上に向かって指を差す。

「追い付かれた」
「!?」

 バッとが指さす方を見上げる轟だけど、そこにはすでに電線から捕縛武器でぶら下がる相澤がいた。

「―と思ったらすぐに行動に移せ」

 轟は急いで迎撃しようと左腕を振るうも、着地する相澤に避けられ空振りする。

「この場合はまず回避を優先すべきだ。先手を取られたんだから」
、行け!」

 轟の号令では走りだす。

「あ、そういうアレか。なら好都合だ」
「痛っ……!?」

 轟は一瞬の隙に相澤の捕縛武器で体を絡め取られ、ぐんと空に引っ張り上げられると電線の高さにまで吊るし上げられた。

「どのみちおまえから捕まえるつもりだった」
「捕まえた……つもりですか。こんな拘束、燃やすか氷結かですぐ……」
「どっちでもいいが落下先には気をつけろよ」

 相澤は轟をぶら下げたまま、電線の上を通した捕縛武器の先を電柱に縛り付け、さらに轟の足元に懐から取り出したまきびしをバラ撒く。

「忍者かよ……嫌らしい対策してくるな」
「そりゃヒーロー殺しの時とは違うからな。ヒーローの個性も人数も知ってる迎撃態勢バッチリの敵だ」

 相澤はゴーグルを取り目薬をさす。
 見たものの個性を消す「抹消」は、消したい対象を視認している間にのみ発現出来る力。

「試験中に気を逸らすとはおまえらしくない。策がまとまらなかったのか?」
「……」
が協力しなかったか? の個性、聞けたのか?」

 聞いた。聞いたけど。

「今までおまえが出した策に首を振る人間なんかいなかったか? おまえは分析力も判断力もリーダーシップもあるが、おまえに関心のない人間など今までいなかったか?」
「……」

 ダッと相澤はがいなくなった方へと走りだし、誰もいなくなった。
 これまで誰も、首を振る人間なんていなかった。
 自分に関心のない人間……

 ゲート方向へ走った相澤は、広い道に出たところで足を止めた。
 まだゲートまでは数キロあるが、がそこにいたから。

「おまえもおまえだ。なんの躊躇いもなく仲間置いてきやがって」
「あいつが指示したことだ」
「ならおまえはここで何をしてる。ゲートを抜けるまでが轟の指示じゃないのか」
「そんなこと言ったらこんなゲームすぐ終わるよ」

 ゲーム。ヤレヤレと相澤は泪に近付いていく。

「これがこの国のヒーローの育て方なら、随分と幸せな国だな」

 ドッと地面を踏み瞬く間に距離を詰めたの右手が相澤の頬を掠める。避けたのも束の間、が体を回し蹴りが飛んできて、相澤はそれを受け止めるとそのまま足を掴みブンとを放り投げた。着地したその足では再び地面を蹴り相澤の懐に入りこむと顎を目がけて蹴り上げ、ヒットの寸でで体勢を変えて飛び後頭部への蹴りに変えた。ゴッと鈍い音がする。しかしそれはヒットの音ではなく相澤が避けた反動を使い捕縛武器での右手を絡め取り地面に叩きつけた音だった。

「じゃじゃ馬が」

 硬い地面で肩を強打するもはすぐに距離を取り捕縛武器を引き離す。

「久々に相手してやる。来い」

 捕縛武器を構え、相澤が手招く。
 コキ、と打った肩を回し異常の有無を確かめたは、笑っている自分に気がついてはいなかった。









ごめんヤオモモ……大事なライジング回を……!

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