くん!? くん!!
おい、どうしたんだよォ!
傍でかけられているはずの声が夜の向こうから届いているように聞こえる。
それよりも一歩、また一歩と歩み寄ってくる足音の方が深く脳幹に響いていた。
の前に立つ飯田が近づいてくる男に対峙しどうすべきか考える。
警戒すべきはあの口。頬まで裂けた口の内に鋭い牙が鈍く光るあの口が脅威なのだろう。だから近づいてくるのだ。だとしたら近接戦闘が強いかもしれない。スピードで翻弄し距離を取りつつ様子を見る。そう飯田は足のエンジンをふかし裾がボッと吹き飛んだ。
「やめろ!」
「!?」
地面に膝を着いたままのを峰田が引っ張り起こそうとする。
けどまるで、壊れてしまったかのようなの足。
「おいで……」
「……」
つ、と冷や汗を垂らすに、枝のように細く長い指が伸びてくる。
男の口から出るの名前。そして明らかに様子が変わった。
尚も男はざりざりと近づいて来て、飯田はと峰田を抱え走った。
「飯田……!」
「駄目だくん、これ以上……君は、ヴィランに近付いちゃ駄目だ……!」
あんな戦い方。一瞬の内に躊躇いもなく消してしまうなんて。
飯田はもう、を少しも敵の気配に触れさせてはいけないと感じた。
もうにあんな戦い方をさせてはいけないと。
すると、走り込んだ先にまたあの黒い渦が現れ飯田は急停止した。
渦の中から牙を剥き飛び出てくる大きく開いた口。
悲鳴を上げる峰田が頭からもぎ取り投げつけると男はひゅっとそれを飛び上がって避け、飯田は二人を離し再びエンジンをふかし攻撃に切り替えた。
「よせ、飯田!」
の声に蹴りだしかけた飯田は空で止め、地を蹴り飛び下がり距離を取った。
男もタッと軽く地面に足を着く。
「くん、どうしたと言うんだ!」
「駄目だ、そいつに手を出すな、絶対に」
「何言ってんだよ!」
この男が現れた当初の動揺は治まったように見えたが、明らかに普段の様子とは違うに、飯田はと男に因縁を感じた。素早く身軽な男の動きはどこかに似てるようにも思え、執拗にに向かっている眼は他の敵とは別の目的を持っているとも感じた。
「邪魔だ……こいつ……」
ぼそり、口唇の隙間から零れくる声。
それを聞き取ったは飯田に下がれ! と叫んだ。
男の細い眼がそれでも自分に焦点が合ったような気がして、飯田はゾクと背筋を逆立てた。ヒーロー殺しの時のような威圧的な殺意ではない。もっと冷たく静かな逃げ道のない、運命とでも誤解してしまいそうな確実な殺意。
「やめろ牙顎ッ……!」
牙を舐め男は執拗に飯田に襲いかかる。走る飯田の方がスピードはあるが、行く先々を読まれているかのようにまっすぐ走らせてくれずスピードを落とされる。少しずつ、確実に飯田との距離を詰めてくる男に飯田は圧倒的な経験の差を感じた。じわじわと逃げ道を消し追い詰めてくる鋭利な牙。
くっ……!
このままでは逃げ切れないと感じた飯田はレシプロバーストで攻撃をかけるしかないと思った。しかし瞬間、に言われたことを思い出した。おまえのレシプロは何も脅威じゃない。
「飯田!」
ハッとの声を聞く。いつの間にか視界を覆い被せた雫を垂らす牙。
しまったと思った時にはもう頭の先に牙の切っ先が当たろうとした。
しかしその寸前にが飛び出しており、飯田の眼前で男の上顎に手を伸ばし掴み止めた。
牙がに襲いかかると飯田は思った。しかし男はの伸ばした右手をガッと掴んだ。
「いこう…………」
男の口端が嬉しそうに耳近くまで吊り上がる。
細い指がの右手に巻き付き、バキンと手首についていた機械を割った。
の手を掴み後方に飛び上がる男の傍に霧のワープが渦巻いて現れる。
ト……と地を蹴る男は霧の中に飛び、の頬にぞくぞくと不協な振動を伝えた。
「くんッ……!」
バーストを噴出し突進していく飯田がの身体に手を伸ばす。
黒く渦巻く霧の中に取り込まれていくの視界は真っ暗に沈んだ。
足先に遠ざかっていく光を追うと必死に手を伸ばす飯田が見えた。
その飯田がずっと持っていた、緑色のキャップ。
「……」
嬉しいじゃないか。貸し借り出来る人がいるなんて。
「……ジョー……」
の口から零れた、光。
「ごめん……牙額……」
「……」
ゴッ……!
は左手の指先にまで筋力を発達させるとその手で掴まれた右腕を両断し、男の体を蹴り離れた。
「……!!?」
が霧の渦から抜け落ちていく。
渦中で男がいまだ掴んでいる右手からボタボタボタと血が流れ落ちた。
落ちてくるの背を受け止める飯田は、糸引く大量の鮮血がどこから噴出しているのかを見た。
「わああああーッ!!」
消えていく男は呆然との右手を見る。
これはもう、ではない。ただの肉片。
男はそれを手離し、軽い右手が落ちていった。
ワープは閉じて霧は消え、静寂広がる夜の広場にポトリと音がした。
「うあっ、ああっ……!」
「……ッ、くん!!」
「わぁああ! ーっ!」
血に溺れる右腕を押さえが激痛にもがき苦しむ。
を抱く飯田の体までじわじわ染めていくおぞましい出血量。
飯田は心の底から震え上がった。
そこにあるはずのものが失われる恐怖と絶望に震え上がり涙を零した。
「飯田、峰田!?」
森から飛んできた声に二人は振り返る。
子どもを抱きかかえた相澤が駆け寄ってきて飯田と峰田は涙を振り落とし叫んだ。
「相澤ぜんぜええッ!!」
「っ……がァあ!!」
「!?」
洸汰を下ろし駆けつける相澤は飯田の頭の上から腕を落としもがき苦しむを見て愕然とする。
「止血だ! 峰田、ブラドを呼んで来い!!」
「は……はいぃッ!!」
「飯田、ここを押さえろ!」
相澤は右腕を掴みうずくまるの体を引っ張り起こし捕縛武器を引くと途切れた右腕を縛りつけた。飯田の腕の中でがまた呻き苦しむ声を上げる。その声に飯田はビクリと怯えながらも相澤に指示された箇所を指先で押さえ込む。ドクドクと流れ続ける血が一面に広がる。血は動脈や切断面を締めつけても止められず、ぽたりぽたりと滴り続けた。
ぐしょりと血に濡れても飯田はを離さなかった。
涙の跡が残る頬は小刻みに震えている。
「をやった相手を見たのか飯田」
「……は、はい……またあの、霧のワープが現れて、そこから出てきた……男が……」
腕から伝わる。体の熱さ、震え、痛み、苦しみ。
「そいつは……くんを知っているようでした、くんも……、それでその男がくんを、連れていこうとして……、それでくんは……自分で……掴まれてた腕を……」
「……」
呼吸の荒くなるは熱に侵されて尚、意識を失わない。
気を失ってくれればまだ痛みも和らぐだろうに、この精神力。
相澤は頭の中で詫びた。何度も、何度も。
もう誰もおまえを疑いなどしない。もう誰にも疑わせない。行かせはしない。
「……ッ」
だから、頼む……、今は眠ってくれ……
「相澤!」
「ブラド、来てくれ! 血が止まらねぇ!!」
「!?」
峰田と宿舎から飛び出て来たブラドキングは腕を切断したを見て即座に手から血液を放出させると、の右腕から肩までに纏わりつかせあらゆる血脈を圧迫し締めつけ出血を止めた。
先生ェ!? 中から補習組の生徒たちが駆け出てくる。
元より切島たちは敵の目的が爆豪だと分かった時から救援を志願したが許されなかった。峰田が泣きじゃくり助けを求めてきた時もブラドにここにいろと指示されたが、こんな形相で助けを求める峰田の様子を見てジッとしていられるわけがなかった。
「!? 飯田、何があったんだよ!?」
腕から滴る血は止まったが、みるみる上がっていく熱と体の震えが治まらない。激痛と出血で気を失っても良いような状態なのに、は押さえつける飯田の腕の中で呻き苦しみ続けている。その声を聞きながら、押さえこんでいた悔しさと無力さを爆発させる切島は歯を食いしばり叫びながらガンガンと何度も両手を地面に叩きつけた。
「ブラド、ここを任せる。俺は戦線に出る。おまえたちは中に戻れ」
「何言ってんだよ! 爆豪も狙われてんだぞ!!」
「爆豪一人とも限らん、ここも狙われる可能性はある。動けない者もいるんだ、ここを守れ」
「葉隠たちは芦戸が見てるよ! 俺も……!!」
何が何でも食らいつこうとした切島だったが、睨み下ろす相澤の冷たく落ちつき払った眼にゾッとし何も言えなくなった。
に、戦いを示唆するようなことを言ってしまった。
ここにいさせる為に、この場を任せるようなことを言ってしまった。
相澤はチラリ、落ちているの右手首を見る。
飯田の傍らに落ちている緑色のキャップも。
臓腑を食い破りそうな憎悪と悔恨を縛り付け、相澤は燃え盛る森の中へ走った。
数分後、森の中に散らばっていた敵がいなくなった。
有毒ガスの被害に遭ったB組の生徒たちは、無事だった生徒や相澤によって救助された。
その15分後、ブラドキングが通報していた警察、救急、消防車が合宿施設へ到着し森の鎮火作業が始まり、負傷した者、ガスに侵された者たちを病院へ運んでいった。
最後に今回の敵の狙いだった爆豪と行動を共にしていた6名が施設へ戻ったが、その中に爆豪はいなかった。敵との戦闘で両腕を粉砕した緑谷は、目の前で爆豪を浚われたことに激昂し全身に走る激痛の中、ついに気を失っていた。緑谷を背負う障子、寄り添う麗日、轟、常闇、蛙吹も軽傷ではあったが、誰もが悔恨と喪失感で意気消沈し口を利けなかった。
「轟、爆豪は……!?」
爆豪が敵に連れ去られたことを相澤に報告した轟に切島が駆け寄る。
轟はただ小さく「悪い」と答えた。
「くそ……、くそォ! 爆豪まで……!」
拳を打ち震わせる切島がまた怒りに駆られ地を踏みつける。
爆豪”まで”?
「飯田くん!? 何その血……大丈夫なん!!?」
緑谷を見送った麗日は宿舎の玄関前で座り込んでいる飯田に駆け寄った。蛍光灯の下で飯田の白いポロシャツにはべっとりと大量の血痕がこびりついており、腕やズボンもおぞましいまでの赤にまみれていた。メガネもかけていない自失する飯田は反応せず、麗日は必死に声をかけ続けた。呆然とする飯田に轟も寄っていくと、飯田の手の中に折り畳まれた緑色のキャップを見た。
「おい飯田……何があった? 何でおまえがそれ持ってんだ!?」
轟の声で常闇も、他の皆も緑色のキャップに視を落とす。
「これはの……」
「飯田!」
轟は飯田の前にしゃがみ肩を掴むが、飯田のあまりに蒼白した表情に手を緩める。
「すまない……轟くん……、みんな……」
「なんだよ、おい、飯田……!」
「A組集合しろ」
救急車のサイレンが遠い山向こうにまで響く中、相澤が生徒たちを集めた。
「全員疲れてるだろうがこれから事情聴取が行われる。終わり次第帰宅、こちらから連絡するまで自宅待機だ」
「先生、爆豪は!?」
「爆豪の救出には警察とヒーローが当たる。現状はA・B組合わせ、無事だった者13名、毒ガス被害15名。葉隠と耳郎が治療中だ。負傷者が11名、内重傷で搬送されたのは緑谷、八百万、の3名だ」
轟は相澤の報告する重傷者の中にの名を聞き安心した。
安心していい状況ではないが……まさか爆豪のように連れ去られたのかと思ったから。
……まさか、行ってしまったのかと思ったから。
轟は生徒たちの合間から飯田を見た。
何とか立ち上がった飯田は、他の生徒たち同様に俯き酷く悲しんで、赤く汚れた手で緑のキャップを握り締め中へ入っていった。立ち上がり、明かりの下に入って更によく見てとれる、寒気の走る血の量。あの血、全て……。
それから残った生徒たちはシャワーと傷の手当てを終えた後、食堂でそれぞれ聴取が行われた。敵の人数、配置、個性、発言に至るまで事細かに警察に伝えた。中でも戦闘の中心だった轟たちの聴取は長く、参考になる情報すら持たない切島にとって聴取の終了を待つ時間が自身の悔恨と屈辱を増長させた。
「今日ほど……己の不甲斐無さを痛感したことはない」
「おまえを取り戻せたことは評価すべき点だ。おまえのお陰で脱した窮地もあった。悔しさは皆同じ」
揺れるワゴン車の中、深い自責に拳を握る常闇の肩に障子が手を置く。聴取を終えた生徒たちは荷物をまとめ、警察車両に二組に分かれて乗り込み施設を出発した。
「おまえらは戦ってたじゃねぇか……、爆豪助けようとしてたんじゃねぇか……! クソッ……俺は……なんもしなかった……!」
「もうやめろよ切島、仕方なかったんだって……」
切島の悔しさもまたその場にいた誰もが同じで、瀬呂も砂藤も口を紡ぐ。
みんなこんなに戦って、こんなに傷を負っていたのに。
「八百万はなんで負傷したんだ?」
「USJの時のあのでかい脳ミソヴィラン、あれが出たらしい。B組の泡瀬が言ってた」
「あいつか……、そりゃ無事じゃ済まねぇな……」
「ガスでやられた奴ら全員ガスマスクつけてたよ。八百万が創ったんだ。すげぇよな、毒ガスなんて誰も防げねぇよ、15人もやられて全員助かったの八百万のおかげだ」
「さすがだよ……」
夜の山道を行く車内の暗さもあって、流れる空気も沈痛なものだった。日中の訓練はハードでも楽しかった林間合宿だったのに、きのうまでの賑やかさが嘘のよう。皆が落ち込み足元に視線を落とす車内で、轟は前を走るもう一台のワゴン車に目を向けた。
「誰か、のことは知らないのか? あいつも補習組だったろ」
「はマンダレイのテレパスが聞こえた時すぐに出てっちまったんだよ。あいつ消えちまったから止める間も無くてさ」
「思えばあの時あいつ、外気にしてたよな。葉隠の声がしたって。もしかしたらそれ、助け求める声だったかもしれねぇのに、俺ら肝試しの声だと思い込んでたからさ」
「俺らが見たのはが葉隠と耳郎を担いで戻ってきた時だったぞ。俺と尾白が二人を中に運んだ後にヴィランが出たんだろ? 峰田」
「もうオイラに聞くなよォ! 思い出したくねぇんだ、すげぇ怖かったんだからな!」
飯田は前の車両に乗っている。ここにいる中で詳細を知るのは峰田だけど、峰田はシートの隅で怯えるようにカバンを抱え縮こまっていた。
「分からなくもない。がやられるほどの強敵だったんだ」
「……違ェよ、ヴィランも強そうだったけど、怖かったのは、だよ……」
「が、なんで……?」
「……俺たちのところにいきなりヴィランが現れて、あいつ、飯田の言うことも聞かねェしよ、そしたらちょうど戦闘許可が出て、の奴……一瞬でやっちまいやがった……」
「……」
峰田は思い出し、ぎゅとカバンを抱く手を強める。
「待てよ……、やっちまったって……? 殺したってことか……?」
「……違う、たぶんだけど……そいつは偽物だったんじゃねぇかと思う。そのヴィランはオイラたちが施設に戻った時は相澤先生が戦っててよ、その時も相澤先生が捕まえたら体が崩れて、消えたんだ。その後相澤先生、皆の方行っちまって、そしたら同じ奴がまた現れて、そいつスゲェ強い青い炎ぶっ放す奴でよ」
「青い炎?」
「そいつ、若い感じの男で、顔とか体がつぎはぎの?」
「知ってんのか?」
轟と障子は顔を見合わせた。
戦った敵の中に青い炎を放つ男がいた。その男の放った炎に障子も緑谷も避け切れずに火傷を負い、障子は左腕に包帯を巻いている。何とか避けた轟も、あの炎の威力と異様さに驚いた。自分の持つ炎とはまるで違った。……それから、爆豪を取り戻せなかった轟に男は言った。哀しいなぁ、轟焦凍。確かに自分の目を見て。自分とは異なる炎を操る男が。
「同じ個性、同じ特徴の人間がそう何人もいるとは考えづらい。確かに個性の力で増やしたと考える方が合点がいく。エクトプラズム先生のように」
「はそれに気付いたんじゃないか……? 戦っている最中にそれらしい違和感を感じたとか」
「そーだよ、あいつそういうの見抜くとか出来そうだよ、なァ!」
「戦ってねぇんだ。そいつがいきなり炎ぶっ放してきて俺と飯田は逃げたけど、はもうそいつの前にいて、がなんでか……そいつと同じ炎出して、あっという間に丸焦げにしちまった……」
「……」
ヒーローが敵を豪快に倒す。そんなシーンはテレビやネットで何度も見てきた光景だった。超パワーを持つヒーローが敵を圧倒的な力で倒してしまうシーンは何度見てもかっこよく痛快で、憧れそのものだった。……はずだった。
「何にせよ、その男の本体はおそらく俺たちが見た男だろう。殺しではない。は……ヒーローになる人間だ」
「そうだよな、そうだよ、良かった……。そもそもさ、あいつ、相澤先生の制止も聞かずに飛び出してったんだ。そのが葉隠たちを背負って戻ってきたんだろ? あいつは真っ先に葉隠と耳郎を助けに行ってたんだ」
「そーだぜ、はそういう奴だって、なぁ」
「だが、一瞬でヴィランをやったと言うならは誰にやられたんだ? そいつじゃないのか?」
「……」
また皆の目が峰田に集まるけど、今度こそ峰田は抱えたカバンに口を沈め黙ってしまった。峰田も飯田も聴取の際に、敵の中にを知っている人物がいたことは誰にも言わないようにと口止めされていた。それも手伝って峰田の震える心臓は余計に締めつけられた。
「飯田、大丈夫かな。なんか、声かけらんなかったけど……」
「緑谷もだ……。爆豪を目の前で浚われた。あんな怪我でも必死に取り戻そうとした爆豪を」
「今頃……どうしてんのかな、爆豪……」
「……」
真っ暗だった周囲が街中に戻るごとに少しずつ明かりが目立ち始め、深夜でも人の行き交いが見てとれて、それは少なからず生徒たちに安堵をもたらせた。生徒たちはそれぞれ自宅へと戻り、敵からの襲撃を知らされていた家族が無事だった事を喜び迎えてくれたが、誰の心も晴れはしなかった。
いまだ病院で目を覚まさない者たち。
敵に浚われ行方の知れない爆豪。
USJの時の比ではない畏怖が誰の根底にも刻みつけられていた。